コピーライターの糸井重里さんと、ライフネット生命の代表取締役会長兼CEOは同い年の66歳。かたや伝説のコピーライターは50歳で「ほぼ日」を創刊。かたや生保業界の革命家は、60歳で「ライフネット生命」を開業。ふたりが働き方について語り合った。

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糸井:出口さんは『「働き方」の教科書』をお書きになっていますよね。ここでのテーマは50歳。なぜこれを書いたんですか。

出口:社会人にとっての折り返し地点だからです。

糸井:40歳ではなく?

出口:ええ、つまりこういうことなんです。人生はだいたい80年。日本人が社会人になるのは平均で20歳ですから、社会人生活は60年になりますよね。その中間点が50歳。マラソンの場合は、折り返し地点で往路と同じコースを戻っていきますが、人生もそれに似ているのではないでしょうか。

糸井:なるほど。

出口 人間はリスクを恐れますよね。なぜ怖いか。わからないからです。でも、50歳を過ぎると、わからないことが少なくなりますよね。だから、「リスクはコストに変わる」んです。

糸井:初めてのことがあっても、自分ができるやり方に分解して考えられますよね。

出口:だから、50 歳の起業は怖くないんですよ。

糸井:清水の舞台だったら、飛び降りるんではなく、土台の柱をつたって下りちゃおうとか、そう考えられるようになるのが50歳だというんですね。いまの説明でわかりました。そんな出口さんは、いま一番働いておられるのでは。

出口:ベンチャーやっていますから、しょうがないですね。

糸井:そっか、ベンチャーってそういう遊びなんだ。「身を粉にする遊び」。

AERA 2014年12月29日―2015年1月5日合併号より抜粋