会見する理研の丹羽仁史チームリーダー(右)と相沢慎一特任顧問。検証実験費用は1500万円。そのうち550万円は、実験室に監視カメラを設置するなどの改装費用という/12月19日、東京都港区 (c)朝日新聞社 @@写禁
会見する理研の丹羽仁史チームリーダー(右)と相沢慎一特任顧問。検証実験費用は1500万円。そのうち550万円は、実験室に監視カメラを設置するなどの改装費用という/12月19日、東京都港区 (c)朝日新聞社 @@写禁

 2014年、科学界を騒がせたSTAP細胞問題。監視つきで再現実験に取り組んできたが成功せず、小保方晴子さんは12月21日付で理研を去る。

 1月にミニスカート姿で颯爽と登場した理化学研究所(理研)発生・再生科学総合研究センター(CDB)の小保方晴子さん。「STAP細胞」と名付けた新型万能細胞で世間をあっといわせた途端、研究不正の疑惑が持ち上がり、調査対象に。論文に掲載された画像の使い回しなど、項目を絞った調査で「捏造」と断定された。

 ジェットコースターのような展開は、その後も続く。

論文作成に問題はあったものの、STAP細胞の存在は揺るがないと考えていた理研は、論文共著者の一人、CDBの丹羽仁史チームリーダーらによる検証実験を始める。STAP細胞ができれば、幕引きになるはずだった。ところが理研のもくろみははずれまくる。

 まず、捏造の判定に不服をもった小保方さんが、単独で記者会見を開き、「STAP細胞はあります」と涙目で訴え、テレビを見ていた人の心をぎゅっとつかんでしまった。

 次に、画像の不正だけでなく、STAP細胞の存在そのものを疑わせる指摘が相次ぎ、理研は新たな調査委員会を立ち上げざるをえなくなった。さらに再現実験もうまくいかない。

 そうこうするうちに共著者の理研CDB副センター長の笹井芳樹氏が自殺。激震が走る。

 そんな嵐の中で続けられた理研の検証実験だった。論文通りなら、マウスの受精卵にSTAP細胞を入れると、体中のさまざまな臓器の細胞にSTAP細胞由来の細胞が混じる「キメラマウス」ができるはず。ところが、1615回試してもできなかった。理研もあきらめ、ついに検証実験打ち切りを決めた。

「200回以上成功」と小保方さんは4月の会見で語ったが、死にそうな細胞が出す光を、STAP細胞ができる段階で出る光ととらえた可能性がある。STAP細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)であった可能性も指摘されている。

 いったい、あの論文は何だったのか。全貌はまだ不明だ。今後、このような不正を防ぐことはできるかと会見で聞かれた丹羽さんは、こう答えた。

「むずかしい。科学は性善説でいいのか。私は(研究に)最後に加わったので、それ以前の小保方さんらが出したデータを信じた。それが問題だったかもしれない。データをすべて自分の手で出さないといけないのかは、わからない」

AERA 2014年12月29日―2015年1月5日合併号より抜粋