数々のドラマを生み、多くの人を魅了してきたプロレス。その世界に魅せられた外科医によると、技のひとつをとっても「理屈にかなっている」ものらしい。『熱く生きる』(セブン&アイ出版)などの著書がある心臓外科医・天野篤さんがプロレスへの情熱を語った。

* * *
 力道山、豊登の時代に始まって、新日本や全日本ができた頃までは、テレビでよくプロレスを見てましたよ。4歳違いの弟にコブラツイストや4の字固めをかけたりしながら(笑)。

 憧れのレスラーは猪木さんですね。「出る前に負けること考えるバカいるかよ」とか「迷わず行けよ、行けば分かるさ」とか、彼の“エビデンス”に基づいた言葉には励まされますし、現役時代は男から見ても惚れ惚れするような体に俊敏性を兼ね備え、理屈にかなった必殺技を繰り出していた。

 たとえば延髄斬りも、首の後ろ側に衝撃を与えることで相手は脳振盪(のうしんとう)を起こし、手足に力が入らなくなる。理屈にかなっているんですよ。

 プロレスで成功を遂げる一方で、事業とか、別のことで失敗する。常に話題を自らつくるけど、でもそのすべてがうまくいくわけじゃない。そういう人間臭いところも好きですね。

AERA  2014年12月22日号より抜粋