減らしたくても、どうすべきかわからない出費の筆頭が、保険ではないだろうか。保険の見直しに詳しいファイナンシャルプランナーの清水香さんが、ある事例をもとに見直し方法を伝授する。

 通販会社に勤務する前田千枝さん(仮名・42歳)は、4年前、父の入院を機に終身医療保険に加入した。月々の保険料は約1万4千円と安くない。これをどこまで減らせるか? 

「まずは公的保険制度と勤務先の給付でどれだけカバーできるか確認し、それでも足りない分の備えを検討しましょう」(清水さん、以下同)

 公的医療保険には、上限額を超えた医療費が戻ってくる「高額療養費制度」がある。会社によっては、さらに「高額療養費付加給付」が上乗せされている。

「医療費に100万円かかったとしても、ひと月あたりの自己負担は2万円程度のことがあります」

 会社員は公的な収入保障保険とも言える「傷病手当金」ももらえる。けがや病気で連続4日以上欠勤すると、標準報酬日額の3分の2を最長1年半まで受け取れる。

 仮に1カ月入院した場合、前田さんが加入する民間保険の給付は約30万円。だが、高額療養費制度を使えば、そこまで医療費はかからないし、傷病手当金で収入も保障される。

 死亡保障100万円は「葬儀用」とのことだが、これも見直しだ。

「そもそも、保険金は請求しないともらえません。独身者の場合、自分の死亡後に誰が保険を請求できるか確認しましょう」

 保険料の払い込み期間は60歳まで。加入10年目で解約すれば約113万円が戻るが、10年間の保険料は約168万円。50万円以上も目減りする。

「安心が欲しくて終身医療保険に加入したはずが、社会情勢や国の制度の変化に応じて見直さなければ逆にリスクを抱えることに。医療保険が必要なら、都民共済などコストの安い定期型を検討するとよいでしょう」

AERA  2014年12月15日号より抜粋