ペットをはさむと会話もはずむ。夫婦や家族のかすがいとなるだけに、離婚のときには難しい問題となりがちだ(撮影/今村拓馬)
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ペットをはさむと会話もはずむ。夫婦や家族のかすがいとなるだけに、離婚のときには難しい問題となりがちだ(撮影/今村拓馬)

 大切な家族の一員であるペット。それだけに、離婚の際にはその存在が大きな問題になることがある。

「一人暮らしに戻ってから、ルルの匂いや毛の感触、足音などが懐かしくて恋しくて、夜になると泣いていました」

 4年前に離婚した元夫に愛犬チワワの「親権」を譲ったことを、Aさん(39)は今も後悔している。元夫が一目ぼれして飼い始め、Aさんは派遣の仕事を辞めてまで子犬育てに専念。しつけ教室の受講料もAさんが負担した。

 離婚の原因は、子作りについての意見の違いだった。愛犬の「親権」争いは1カ月ほど続いたが、部屋の隅で目を閉じて震えてしまうルルに心が痛み、話し合いをやめてしまった。

 結局、日を追うごとに心身ともに疲弊して気弱になっていたAさんは、経済的な引け目もあって、仕方なく「親権」を手放した。離婚協議書で面会頻度を決めておらず、今年はまだ1度しか会えていない。

「もっと会いたいけど、協議書にないことを要求して機嫌を損ねたら、二度と会えなくなるかもしれない。再婚相手が犬嫌いだったら私が引き取るなど、もっとくわしく協議書に書いておけばよかったのかもしれない」

 家族として長い時間をともに過ごしてきたペットだからこそ、飼い主の離婚によって「親権」問題に発展することもある。この女性のように後悔しないためには、どうすればいいのか。

 離婚案件を数多く扱う、丸の内ソレイユ法律事務所の中里妃沙子弁護士は言う。

「ペットはあくまでも『動産』の一部。離婚の際は、動産のストックを純粋に二つに割る財産分与の対象になります。犬の購入代金や飼育費などを夫婦のどちらが負担したかは、関係ありません。協議のうえで、家具や家電と同じように引き取り手を決めるだけです」

 子どもの親権は離婚後も裁判で変更できるが、民法上は「物」として扱われてしまうペットはそれができない。後悔しないためには、協議内容に納得がいくまで離婚しないことが大事だ。

AERA 2014年12月8日号より抜粋