男女雇用機会均等法の施行から28年。男性と同じルールのもと成果を出すことが平等だと、がむしゃらにキャリアを積んできた女性たちが今、更年期に突入している(撮影/写真部・植田真紗美)
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男女雇用機会均等法の施行から28年。男性と同じルールのもと成果を出すことが平等だと、がむしゃらにキャリアを積んできた女性たちが今、更年期に突入している(撮影/写真部・植田真紗美)

 職場で突然ホットフラッシュ、関節痛…。でも、部下の手前、休んだり愚痴ったりもできなくて…。更年期の女性管理職が人知れずこんな不調を抱えている。

 更年期は、閉経を挟む前後の概ね45~55歳とされ、女性の心と身体の働きに作用する女性ホルモンのエストロゲンが減少することで、さまざまな不調をもたらす。

 だが、たとえ不調を感じても、つい無理を重ねてしまう人や、仕事と並行して子育て介護に追われ、自分の身体を顧みる余裕がないという人は多い。それが管理職というポストに就いていれば、なおさらだ。

 PR会社で執行役員を務める女性(55)もその一人。

「ワーキングマザーに対する環境は整っているけれど、更年期障害に関して職場の理解はまったくない。社長も男性だし、社員の大半は20~30代前半と若いこともあり、だれにも言えないまま自分なりに努力しています」

 この春に管理職ポストに就いたのと前後して、心と身体の不調を感じるようになった。社内に20人余りいる女性のトップとして、付いて回る「女性初」のプレッシャー。それに加えて、持ち前の責任感の強さが、症状を一気に悪化させた。

 部下に対してすぐにイライラし、気持ちが晴れない。軽い動悸やホットフラッシュなどもあり、仕事が忙しすぎて眠れない日は、婦人科で処方された睡眠導入剤を服用したこともある。体調が悪いときは仕事の量をセーブしながら、何とか折り合いをつける毎日だ。

「私自身も周りから『更年期』と言われるのは嫌なので、そう思われないように常に気を使っています」と、この女性は言う。

 更年期世代の女性の健康づくりを支援する「NPO法人女性の健康とメノポーズ協会」の三羽良枝理事長はこう指摘する。

「ロールモデルがないために、だれにも理解してもらえず、仮に言ったとしても『更年期』というレッテルを貼られる。通院のための時短勤務が認められるだけでも助かるのに、そこを我慢して自らポストの降格を申し出たり、退職したりといった非常に残念なケースもあります」

AERA  2014年12月8日号より抜粋