角という角に、ラグジュアリーブランドの大型店舗──。表参道や銀座、新宿など東京都心では、そう言っても過言ではないほど、外資系ファッションブランドの新規出店やリニューアルが相次いでいる。そこには東京五輪のほか、日本ならではの土地柄が影響しているようだ。

 繊研新聞社の矢野剛編集部長は、多くのラグジュアリーブランドが日本での展開を目指す理由を「投資銀行やファンドの戦略がブランドビジネスにも色濃く反映している。東京五輪が決まった直後から海外ブランドの投資が増えています。東京の中心部、特に銀座に出店したいラグジュアリーブランドは多い」と話す。

 オリンピックに向けて、中国人をはじめとするアジア各国からの観光客の消費にも期待がかかるというわけだ。

 さらに、日本での成功がブランドに及ぼすプラスの影響も大きいという。

 日本を第2の故郷と考えるブランドは少なくない。例えばルイ・ヴィトンは、1981年にブランドの運営方法を変更して100%出資の日本法人を設立、すべて自分たちでコントロールできる仕組みを作った。これが大成功を収めて日本市場での売り上げが急伸。その後、他のブランドも同様の戦略を進め、LVMHグループの2013年12月期のワールドワイド売上高は4兆円に達している。このビジネスモデルを参考にしているブランドも多い。

 実は、「新しいサービスやアイデアは日本から生まれることも多い」と矢野さんは言う。

 あるイタリアのジュエリーブランドが商品にバーコードをつけることになったのは、日本からの提案だった。

「日本は細かい気遣いや気配りが得意。店頭でのおもてなしの心、接客技術も優秀です。日本でサービスを開発したり実験したりして、成功したら世界で展開していく。日本市場にはラグジュアリーブランドの『ラボ(研究所)』の役割があります」(矢野さん)

AERA  2014年12月1日号より抜粋