給与は頭打ち、ポストも減少、肩たたきは目の前。
今の会社に残るべきか、飛び出すべきか。多くの人が、迷っている。
残りの人生、どこで、どう働くのか。今だからこそもう一度考えたい。

(編集部・石臥薫子、鎌田倫子)

「とうとう来たか」

 メガバンクで働く男性(47)のパソコンに、一昨年、人事部からメールが届いた。45歳で受ける通称「黄昏(たそがれ)研修」のお知らせ。先輩から聞いてはいたものの、実際に受け取ってみるとショックだった。

 男性は1990年入行のバブル入社組。当時はいち都銀だったのが、合併の繰り返しで行員数は膨れ上がり、ポストは激減している。

●本体に残れるのは数人
「同期が何人いるか、もはやよくわからないけど、多分800人くらい」で、銀行本体に残れるのは数人だ。最近は部門の統合でさらにポストが減り、51.5歳といわれてきた実質定年も早まりそうな勢いだ。

 研修では人事担当者から「今後の生き方指南」を受けた。どんな資格を取ったらこの先使えそうか、といった知識から、「熟年離婚で妻に捨てられないための心構え」まで。

 実質定年後の選択肢は、取引先企業に出向するか、関連子会社に行くかの二つ。後輩にペコペコ頭を下げて、仕事をもらう立場になる関連子会社より、取引先企業のほうが給与も高くて魅力的だが、「今どき、借り入れで銀行に頼るために出向者を受け入れたい企業なんて、ほとんどない」のが実情だ。

 アエラは、会員制転職サイト「ビズリーチ」を通じて、40代のビジネスパーソン590人にアンケートを実施した。今の会社で働く上での心配は?という質問に、多くの人は「給与が上がらない、もしくは下がる」と、「しかるべきポジションの不足」をあげた。「事業縮小など会社の方向性」や「リストラ」への不安も強い。

 ソフトウェア会社の技術者の男性(48)は、開発のスキルを磨き、三つの会社を渡り歩いてきた。しかし「最近、給与が下がってきた」と表情を曇らせる。

 営業職の同僚は管理職に上がったが、男性はヒラのまま。

「ある特定の分野で、ずば抜けたものがないと、60過ぎて働けないと思うんです。だからこそスペシャリティーを高める努力をしてきたが、社内的に、それはちっとも評価されない」

●稼いで安心したい

 このまま、この会社にいても先はない。そう思って転職活動もしている。しかし、国内企業から決まって聞かれるのは「管理職経験はありますか?」。

 その度に、心の中で毒づく。

「管理職、管理職って、今、なれていないから転職しようとしてるんだよ!」

 現在は、管理職経験ではなく、自分の技術に興味を示してくれた外資系企業と交渉中だ。

 男性は、独身。身軽ですね、と言われるが、誰も頼る人がいないからこそ、経済的にはもっと稼いで安心したい。60過ぎても、ずっと家にこもる生活なんてまっぴら。体が元気な限りは、仕事を通じて社会とつながっていたい、と願う。

 読者にも聞こう。あなたはこの先、何歳まで働きたいですか。65歳? 70歳? それとも働ける限りずっと?

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