藻からつくるジェット燃料で飛行機飛ばしたいネオ・モルガン研究所社長 藤田朋宏さん(41、右)川崎市のかながわサイエンスパークの本社で、若手研究者らと。現在、横浜にあるIHIの工場の養殖池で藻の培養を行っている。気温の高い東南アジアでの大規模プラントも構想している(撮影/今村拓馬)
<br />
藻からつくるジェット燃料で飛行機飛ばしたい
ネオ・モルガン研究所社長 藤田朋宏さん(41、右)

川崎市のかながわサイエンスパークの本社で、若手研究者らと。現在、横浜にあるIHIの工場の養殖池で藻の培養を行っている。気温の高い東南アジアでの大規模プラントも構想している(撮影/今村拓馬)

 ソーラーエネルギーや天然ガスなど、新しいエネルギーが注目を浴びている。そんな中、日本のベンチャー企業が研究している新エネルギーが「モブラ」だ。

「東京五輪までにはモブラでジェット機を飛ばし、日本の技術を世界に示したい」

 川崎市にあるベンチャー企業「ネオ・モルガン研究所」の藤田朋宏社長(41)は、意気込む。モブラとは「モから抽出したアブラ」。同研究所はジェットエンジンを手掛ける総合重機メーカーIHI、バイオベンチャーのジーン・アンド・ジーンテクノロジー(G&GT)と合弁企業IHI NeoG Algaeを立ち上げ、藻から作るジェット燃料実用化を急いでいる。

 石油に代わる植物由来の燃料油「バイオディーゼル」の開発が静かに広がっている。世界の主流はトウモロコシやサトウキビなど穀物類だが、農産物の転用は食糧不足や価格高騰につながりかねない。非食糧原料を使うことで注目されているのが、日本の「藻類」。沼や湖に漂う藻から油を抽出する技術だ。

 藻類には光合成で炭化水素を合成する種がある。研究者の世界では40年ほど前から知られていたが、石油が安定供給されていたころは誰も注目しなかった。「藻が出す油」は原油100ドル時代になって脚光を浴びる。研究者たちは各地に生息する藻を採取し、油の合成力や繁殖力が強い種を探しまわった。

 IHIグループは、ボツリオコッカスという藻類の一種である「榎本藻」を採用。G&GTの顧問を務める神戸大学の榎本平教授が発見した藻で、繁殖力が強い。藤田社長は東京大学大学院で進化の研究に取り組んだ研究者。ネオ・モルガン研究所は、育種技術で、藻の合成力・繁殖力を高める改良に取り組む、世界でも珍しい企業だ。

 研究室ではジェット燃料に使える高純度燃料が抽出された。

「技術的な道筋はついた。課題は製造コスト。いま1リットル500円だが、100円に下げたい」(藤田社長)

AERA 2014年12月1日号より抜粋