モンチル。つまり「モンスターチルドレン」。学校に、先生に、まるで「大人のような」クレームをつける子どもたちが増えているという。「モンチル」の問題行動は、今や授業妨害だけにとどまらないようだ。

 首都圏在住のある母親は娘が中学生だった当時、同級生から「先生を辞めさせるための署名」を求められたことに驚いた、と話す。

 通っていたのは中高一貫の進学校。教育熱心で高学歴の親が多く、先生たちの教え方を批判する人もいた。このことと署名との間に直接的な関係があるかどうかはわからないというが、その形式は、右から一人ずつ名前を書いていく「最初に書いた人」がわかるものではなく、放射状に名前が並ぶ「傘(からかさ)連判状」。その巧妙さが驚きを増幅させた。

 署名は数人が書いたところで学校の知るところとなり、大問題に。母親は言う。

「私が子どものころ、母親は先生を尊敬していたし、私にも敬うように言っていました。うちの娘は署名を断ったようです」

 先生が敬うべき「聖職」ではなくなってしまったことで、先生の容姿も攻撃の対象となった。

 中学生になると、特に女子校で、肌が荒れている男性教師が「気持ち悪い」と嫌われるケースが驚くほど多い。ある女子校では、「肌が荒れていてキモい」と生徒たちが担任を嫌い、コントロールがきかなくなって、とうとう担任をおろされたということもあったという。

 育児・教育ジャーナリストのおおたとしまささんの分析はこうだ。

「学校に民の力を取り入れること自体は、現場の活性化にもつながることだと思います。ただ、合理性の名のもとに、学校選択制や人事考課制度の導入など、公教育において行き過ぎた『会社ごっこ』が行われると、さまざまな場面に『ひずみ』が出てきてしまうのです」

 民間企業なら、過剰サービスが利益を圧迫することに耐えられなくなったら、サービスや商品の質を落とすことを選択せざるを得なくなるのが常だ。しかし、教育の現場ではそうはいかない。

「結局、合理的になるどころか教師の負担だけが増える。これほど風当たりが強い時代に、教師は損得勘定抜きに子どもに接しています。それなのに、保護者や児童がお客さま意識を振りかざすようでは、アンフェアです。しかし、現場では立場が弱くなってしまった教師相手に、もっとサービスしろ、という親子が後を絶たないのです」(おおたさん)

AERA 2014年11月17日号より抜粋