追加緩和の具体策を説明する日銀の黒田東彦総裁。市場はサプライズに沸いたが、出口なき“異次元緩和”の終着点は、だれにも分からない (c)朝日新聞社 @@写禁
追加緩和の具体策を説明する日銀の黒田東彦総裁。市場はサプライズに沸いたが、出口なき“異次元緩和”の終着点は、だれにも分からない (c)朝日新聞社 @@写禁

 日銀の“サプライズ追加緩和”によって、株価は再びプチバブルの様相だ。だが、“劇薬”は必ず副作用を伴う。アベノミクスの行き着く先は…。

 今回の金融緩和は安倍首相への「消費再増税への援護射撃」とみられている。来年10月に消費税が10%に上がることになっているが、それには経済の好転が条件だからだ。

 そして援護射撃説には、もう一つ根拠がある。追加緩和決定と同じ日、厚生労働省が所管する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、国債による運用を減らして株を増やす方針を発表した。130兆円もの公的年金の積立金を運用するGPIFが株を買い増せば、株価の押し上げ効果が期待できる一方、売られた国債の価格が急落(金利は急騰)して市場が混乱するおそれがある。

 BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストによると、追加緩和で増える日銀の国債購入額の年30兆円は、GPIFが手放す国債の額とほぼ同じ。つまり、GPIFが株を買うお金を日銀が提供する構図だ。

「政府が検討中の今年度補正予算による景気対策も含め、政府・日銀の一連の政策は、中央銀行が国債を買って政府支出や政府機関の株購入資金を賄う『マネタイゼーション』そのもの。先進国でそんな政策が実施されるとは、本当に驚くばかりです」(河野氏)

 マネタイゼーションは、なぜ危ういのか。日銀は紙幣を刷る権限がある中央銀行だ。もし日銀が政府の言うがままに紙幣を刷れば、政府は不人気な増税ではなく、紙幣を刷って財政赤字を穴埋めできる。ただ、一歩間違えれば円の価値は暴落するだろう。かつて日本は、戦費を賄うため紙幣を刷りまくり、終戦後の激しいインフレで国民の財産は失われた。だからこそ、政府の命じるままに紙幣を刷ることがないよう、日銀は日本銀行法によって独立性を担保されている。

 いま国の借金は1千兆円を超え、財政事情は先進国で最悪と言われて久しい。消費税率を10%に引き上げたとしても、借金返済のため新たに借金を重ね、残高が雪だるま式に増え続ける状況は変わらない。

AERA 2014年11月17日号より抜粋