アギーレ・ジャパンが、ベテランを呼び戻して奮闘中だ。でも、本当の実力はどうなのか。サッカー記者3人が、バッサリ斬る。
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潮智史さん(朝日新聞編集委員):ズバリ、いまの日本サッカーに何を感じていますか?
杉山茂樹さん(スポーツライター):期待しちゃいけないというか、日本経済と一緒で右肩上がりが終わったのに、その自覚がない。W杯で16強に進めないのは普通のこと。力を自覚したうえで、さあどうしようかと考えないと。
潮:ブラジル大会で選手たちは、日本は攻めのサッカーがスタイルだから、自分たちのサッカーをやれば結果はついてくると言っていました。
北條聡さん(元週刊サッカーマガジン編集長):サッカーは攻めればいい、守ればいいの二択主義ではない。野球のように守備と攻撃が分かれていない。
杉山:ザッケローニ監督のサッカーって攻撃的だったの?全然違うと思う。明らかにボールの取り方に失敗していた。
北條:ブラジルW杯のコートジボワール戦の走行距離をみると、日本は異常に走っていた。試合中はほぼボールを追いかけているだけ。ボールを持ってプレーに関与した走りではないし、攻撃にまったく生かせていない。
潮:アギーレ監督ですが、どんな印象を持たれましたか?
杉山:アギーレがスペインで指揮を執っていた頃を取材したから、よく知ってるよ。基本は、高い位置からプレスをかけ、相手のボールを確実に奪い切るサッカー。この点は、ザッケローニよりもきちんとチームに植え付けると思う。奪った先、ザッケローニはボールを丁寧につなぐ「支配」タイプだったけど、アギーレは素早くゴール前に迫るサッカーを目指すだろうね。大きな違いは、ボールを奪う意識。そこを重視するはず。だから、サボる選手は使わない。勤勉、まじめ、忠実な“日本人的”な選手が選ばれやすい。
潮:日本って外国人の監督に、トルシエの「フラットスリー」じゃないけど、すごい戦術を授けてくれるのではないかと、変な期待を持ちがちです。
北條:海外組の選手も増えた今、オフトやトルシエのように、クラブチームのような代表チームづくりは難しいでしょうね。スペイン、ドイツがW杯で優勝したけど、ともに国内リーグのトップクラブに所属する選手を代表の主軸にしている。バルセロナやバイエルン・ミュンヘンといったクラブチームで活躍する自国の選手たちを7、8人、「ユニット」の形でそのまま代表で使えるから、完全に欧州のサッカー大国が優位になった。
杉山:だから、代表チームに新しい戦術なんてないんですよ。北條 欧州の大国以外、オーソドックスなチームをつくるしか選択肢がない。
※AERA 2014年11月24日号より抜粋