子どもがなんでもかんでも妖怪のせいにする――そんな悩みを、小学生の子どもを持つママたちが抱えているそうだ。原因は、「妖怪ウォッチ」。この世の不可解な出来事は、すべて妖怪が引き起こしている、という設定。アニメでは、とりつかれると何が起こるのか、子どもたちをワクワクさせる。

 ゲームソフトを制作した「レベルファイブ」の日野晃博社長は、今年6月のアエラの取材に、アニメのストーリーは小学生の悩みをリサーチしながら考えていると明かしている。

 例えば、学校でトイレに行きたくなる気持ちは、モレゾウという妖怪にとりつかれることで起きる。悩みがそのまま妖怪になって、クスッと笑える作品になっているのだ。

 実はこのアニメ、大人が見ても面白い。「太陽にほえろ!」のパロディーなどノスタルジックなネタが多いうえ、何となく「ドラえもん」を彷彿とさせるつくりに安心感を覚える。それもそのはず。日野社長は「ドラえもんのように普遍的な作品をつくりたかった」のだ。

 何をやってもダメなのび太に代わり、主人公のケータは何をやってもふつうの男の子。スネ夫にあたるカンチに、狡猾さはない。しずかちゃんに相当するフミちゃんも、お嬢様すぎることはなく、ふつうの女の子。そして、みんな仲良しなのである。

 東北公益文科大学の渡辺暁雄准教授は指摘する。

「最近の子どもは、親密さに価値を置いています。関係の濃い和の中から外れることを嫌がるので、子ども同士では極力トラブルを避けているのです」

AERA  2014年11月3日号より抜粋