忙しさから来る時間や心のすれ違い、家庭内に持ち込まれる「仕事」が原因となって、共働き夫婦はよりセックスレスに陥りやすい。加えて、多忙で時間がないからこそ意識しがちな「計画的な子づくり」が、レス状態に追い打ちをかける。

 映像制作会社勤務のジュンイチさん(38)は結婚10年を迎える。しかし最近、セックスに義務感を感じるようになった。きっかけは2年前に妻が始めた不妊治療だ。

「それまでは、共働きのすれ違い生活でも、休日は一緒に過ごしたり仲は良かったんです。それが病院通いでつぶれるようになった。一生懸命な妻が痛々しいし、子どもに恵まれたいとは思いますよ。でもだんだん気が重くなってきて。僕自身の検査を求められるたびに憂鬱になるし、セックスも楽しくなくなってしまいました」

 ジュンイチさんのように、妊活がもとになってセックスレスになる夫婦が意外と多いと言うのは、「子宝カウンセラーの会」事務局長兼理事の柳田浩二さんだ。全国各地で妊活セミナーを行う柳田さんは、特に女性に対し、男性の心理を理解することを説く。

「男はとにかく子ども。妻のほうが大人になって、夫を手のひらの上で転がすつもりでいてください。アラフォーだからそろそろ子どもを産まなきゃいけない、だからもっとセックスしてとか、精子を出してとか、そんな理由で夫を追い詰めちゃう妻が多いんですね。だけどそれじゃケンカにもなるだろうし、しまいに男は勃起できなくなってしまいますよ」

 しかし、子どもが欲しい女性には、妊娠可能年齢という壁は確実にある。焦りが出るのも無理のないことだ。この隔たりはどうしたらいいのか?

「夫に『赤ちゃんが欲しい』と訴えるほど失敗します。男は本能的に『俺は生殖マシンか』、と感じて身も心も凹(へこ)んでしまう。そこに『あなたの』を付け加えてほしいんです。目をキラキラさせて『あなたの赤ちゃんが欲しい』と言われたら、夫はすごく頑張りますよ。単純なんです」

(文中カタカナ名は仮名)

AERA 2014年10月27日号より抜粋