キャラクターが身に着ける衣装などが描かれたカードは、12年10月の開始から14年3月までに1億1千万枚を出荷。バンダイは「近年データカードダスの中で、小学生の女の子向けコンテンツが欠けていた」というが、アイカツ!によって「女子小学生が集めるカードゲーム」という新市場を開拓した。

 データカードダスチームのリーダー、廣瀬剛さんは言う。

「アイカツ!はリアルさを追求した。この年代の女児は『子どもっぽい』と感じると離れる傾向がある。そこでファンタジーではない路線を目指しました」

 オーディションで選ばれたり、多人数で活動したりするアイドルグループが全盛を迎える今、少女たちにとってアイドルは手の届かない存在ではなくなった。アイドルの現実感が増すなかで、“脱ファンタジー”を明確にしてヒットを呼び込んだのが、アイカツ!なのだ。

 リアルへのこだわりは細部に及ぶ。各キャラクターには好みのファッションブランドがあり、その数は現在14。ピンク色を基調にした、いわゆる女の子らしいブランドやロックテイスト、セクシーさを強調したものなどで、それぞれのブランドコンセプトをはっきりと打ち出した。

●男児向けノウハウ応用

 ゲームは音楽に合わせてボタンをたたくリズムゲーム。これを楽しむ子どもたちは「オーディションのステージに立つ」という設定だ。舞台に合ったドレスやアクセサリーのカードを選べば、得点が底上げされる。

「男の子向けでヒットしたノウハウを応用しました。従来の女の子向けは、男の子向けのような戦闘シーンがなく、難しかった。アイカツ!はブランドコンセプトに合うか、合わないかという軸をつくりゲーム性を持たせました」(廣瀬さん)

 ゲームはアニメとの連動で魅力が高まる。ゲーム用カードは2カ月に1度、新キャラクターが登場し、新しいドレスなどが紹介される。アニメでは、その新しい登場人物や衣装を扱った物語が描かれる。こうした展開は、バンダイとサンライズの担当者が毎週行う会議で詰めている。監督の木村隆一さんは、

「アニメは、アイカツ!の世界観をつくる役割。物語の力で、ゲームを遊ぶ子どもたちの想像力を膨らませたいのです」

 12年に放映が始まったアニメは、10月から3年目。今季から主人公が星宮いちごから大空あかりに交代した。アイカツ!の脚本家、加藤陽一さんは言う。

「前シリーズまでは泣き虫だったあかりが、人と出会うことで運命を変えていく。あかりと出会った周りの人間も変わる。『出会いって素晴らしい』。新シリーズでは、そんなメッセージが伝わればと思っています」

 子どもたちの心をがっちりとつかんだアイカツ!と妖怪ウォッチの勢いは、どこまで続くか。

AERA 2014年11月3日号