妖怪ウォッチファンなら誰もが欲しがる「妖怪メダル」。コレクター心理をくすぐり、年間製造枚数は1億枚に(撮影/写真部・加藤夏子)
妖怪ウォッチファンなら誰もが欲しがる「妖怪メダル」。コレクター心理をくすぐり、年間製造枚数は1億枚に(撮影/写真部・加藤夏子)
個別に数値があり、価値がわかりやすく示された「アイカツ!」カード。これも、バンダイが仮面ライダーなどのカードで培ったゲーム性を高める演出の一つ(撮影/写真部・加藤夏子)
個別に数値があり、価値がわかりやすく示された「アイカツ!」カード。これも、バンダイが仮面ライダーなどのカードで培ったゲーム性を高める演出の一つ(撮影/写真部・加藤夏子)

玩具市場の主役になった「妖怪ウォッチ」。女の子は「アイカツ!」に熱中する。子どもたちの心を捉えて離さない二つのキャラクターには、共通点がある。ヒントは「現実以上、ファンタジー未満」だ。(編集部・宮下直之)

 大人気の秘密は、アニメ「妖怪ウォッチ」の第1話にあった。

 ある夏の暑い日。主人公の小学生ケータが、友達のクマやカンチと一緒に、「レアな虫」を求めて昆虫採集している。森の奥深くで、古びた「ガシャガシャマシン(カプセル入り玩具の自動販売機)」を見つけたケータ。硬貨を入れ、ハンドルを回して出てきたカプセルを開けると、「妖怪執事ウィスパー」が飛び出してきた。

 彼からケータに手渡されたのが、「妖怪ウォッチ」と呼ばれる不思議な腕時計だ。妖怪ウォッチから発する光によって、人間がふだん目にすることのない妖怪の姿が浮かび上がる。物語はこうして幕を開けるのだが、注目すべきはこの腕時計ではなく、昆虫採集という遊びだ。

「昆虫採集と、日常に潜む妖怪を探すという『妖怪ウォッチ』のコンセプトが、同列の行為だと象徴的に示されたシーンです」

 ゲーム評論家のさやわかさんは、そう解説する。日常生活の延長線上に、あたかも本当に妖怪ウォッチの世界が存在しているかのような演出。そうした現実との「地続き感」が、子どもたちを引きつけるのだという。

●現実と「地続き感」

「子どもたちはゲームの中で妖怪を探し、現実の世界でゲームなどと連動した玩具の『妖怪メダル』を求めて店を回る。やがて両親も巻き込まれ、子どもと一緒に買い物に行く。妖怪ウォッチは、家族をつなぐレジャーだと言えます」(さやわかさん)

 社会的なムーブメントを起こしている妖怪ウォッチ。原作は、福岡市のゲーム制作会社「レベルファイブ」が昨年夏に発売した携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」用のソフトだ。その販売本数は125万本を超え、今年7月発売の続編は1カ月余りで200万本を突破した。

 こうした熱狂は、ゲームソフトにとどまらない。バンダイが販売する玩具「DX妖怪ウォッチシリーズ」は年末までに、200万個を出荷する計画。妖怪ウォッチに装着して遊ぶ「妖怪メダル」はコレクターアイテムとなり、年内に1億枚の販売を見込む。漫画を連載している小学館の「月刊コロコロコミック」は、9月号が100万部を突破。アニメはテレビ東京系で放映され、番組で流れる曲を収めたCD(エイベックス)も人気だ。

●市場は500億円以上

 妖怪ウォッチのビジネスモデルは、こうしたパートナー企業との連携が特徴の一つ。各企業が取り扱う製品も単独で売り出されるのではない。玩具の妖怪ウォッチは、ケータがゲームやアニメで身に着けているものと同じデザインで、ファンならばどうしても欲しくなる。妖怪メダルのQRコードを読み取ると、ゲームの中でその妖怪を仲間にできる。ミリオンセラーを達成したコロコロコミック9月号の付録は、妖怪メダルだった。

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