職場でのワーキングマザー支援は進みつつある。だが、それ以前の「妊活」支援には、当事者も周囲も葛藤がある。

 江東区在住のメーカー勤務の女性(42)は、2人の小学生の1男1女を子育て中だ。不妊に悩んだ経験はない。

「正直、毎日が殺人的な忙しさですが、子どもと生きる幸福感は、何にも代えられません」

 だからといって職場では決して、子どもを産んだほうがいいという価値観を押し付けない。だが、配慮しているつもりでも、妊活や不妊に関する地雷は、いくつ踏んだかわからないという。例えば、夫婦でアウトドアやスポーツが好きな先輩の女性がいた。

「子連れでのイベントにも誘ってくれるので、私は会うと子どもの話ばかりしていた。それで産みたい気になればなという程度の気持ちです。それが後に、彼女が何年も不妊治療を受けていたと聞いて……」

 この子育て中の女性は、自分が当事者になったことがないため、不妊に悩む人は打ち明けてくれているはずだと誤解していた。いま思うと「傷つけてしまっていたのかもしれない」と後悔している。

 気の使い方を間違えられて、大きな心の傷になっているというのは、新宿区に住む会社員の女性(38)。これまで2回、体外受精に挑戦した。

「排卵誘発剤の注射のために、1週間くらい続けて午前休をとらなくてはいけないことがあったんです。仕事を調整するために、信頼している同僚に相談したら、翌日には大嫌いな上司も私が不妊治療をしていることを知っていて……」

 その後、その上司から「夫のパワーがないのか?」「もう少し色気のある服を着てはどうか」など、セクハラ攻撃が続き、疲弊した。この女性が治療で会社を休みやすいようにと、同僚が“善意”から上司に掛け合ったりしなければ、こんなことにはならなかったのにと感じてしまう。この女性は訴える。

「たとえ良かれと思っても、他言するのなら、絶対に本人の了承を得てからにしてほしい」

 詮索しないが、さりげなくフォロー。妊活中の女性たちが周囲の同僚に求めるのは、そういう態度のようだ。

AERA  2014年10月20日号より抜粋