10代、20代の若者が幾晩も夜通しで民主化を求めた (c)朝日新聞社 @@写禁
10代、20代の若者が幾晩も夜通しで民主化を求めた (c)朝日新聞社 @@写禁
中国を変えることは難しいと分かっていても、立ち上がったエネルギーの熱量は大きかった (c)朝日新聞社 @@写禁
中国を変えることは難しいと分かっていても、立ち上がったエネルギーの熱量は大きかった (c)朝日新聞社 @@写禁

 香港で行われた大規模なデモ。SNSや最新アプリを駆使したそれは「クレバーな印象」で、中国の反日デモとは対照的なものだった。

 演説するリーダーの声に呼応し、香港の中心部・中環(セントラル)に集まった民衆が、ライトをつけたスマホを高々と掲げた。10月1日の夜。「国慶節」と呼ばれる中国の建国記念日で、本来ならば、盛大な花火が打ち上げられるはずだったが、中止に追い込まれた。代わりに夜空を照らしたのは、無数の青く輝くスマホの光だった。

 警察の催涙弾から身を守る雨傘にちなんで「雨傘革命」と名付けられた今回の民主化運動を、陰で支えたスマホの活躍を象徴するシーンだった。

 大衆運動にSNSなどネットテクが不可欠な時代になった。アラブの春に始まり、米ウォール街占拠、台湾ひまわり運動。いずれの場でも動員や情報伝達に絶大な効果を発揮し、民衆が当局の機先を制することも可能にした。香港にもそのノウハウは持ち込まれた。

 市民に向けられた催涙弾の発射を「インスタグラム」という写真共有アプリで一気に拡散させ、報道管制を敷く中国にも流入させた。香港でネット回線を切られる懸念が広がると、ネットにつながなくてもBluetoothで周囲の人々のスマホを数珠つなぎにして情報交換や対話ができる最新のチャットアプリ「Fire Chat」が、数日で10万件もダウンロードされた。

 2週間にわたって最大30万人が参加した運動は、盛り上がりに加え、そのクレバーさも印象的だった。現地を見てきた、香港政治に詳しい立教大学の倉田徹・准教授は振り返る。

「非常に秩序があり、学生や民衆もきわめて冷静。政府支持派がまぎれ込み、意図的に騒ぎを起こそうとしているとも言われたが、小競り合いが起きても、周囲がすぐになだめて仲裁に入っていた。暴動や破壊などのトラブルもなく、参加者が暴走した中国の反日デモとはまったく対照的であるのが印象的でした」

AERA 2014年10月20日号より抜粋