音が反射しないように、風洞装置の室内は6面を吸音パネルで覆った無響室になっている。写真は、15分の1nN700系の模型/小牧研究施設(撮影/写真部・工藤隆太郎)
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音が反射しないように、風洞装置の室内は6面を吸音パネルで覆った無響室になっている。写真は、15分の1nN700系の模型/小牧研究施設(撮影/写真部・工藤隆太郎)

 もっと速く、は人々の願いだった。それを追求して、新幹線は進化を続けてきた。その進化はスピード、エネルギーなど様々な面で、今後さらに加速していきそうだ。

 新たなスピードの領域を切り開くのが、JR東海が2027年に品川─名古屋間で開業を目指している「リニア中央新幹線」だ。

 特殊金属をマイナス269度に冷やし、電気抵抗をゼロ(超伝導現象)にして強力な磁力を発生させ、車両を約10センチ浮かせて走行する。45年には大阪まで延伸する計画で、完成すれば、時速500キロで品川─名古屋を最速40分、品川─大阪を67分で結ぶ。

 さらなる未来を見据えた研究も進んでいる。「エアロトレイン」と名付けられた、太陽光と風力をエネルギー源に浮上走行する超高速列車だ。

 東北大学の小濱(こはま)泰昭名誉教授らが99年から走行実験を開始し、12年には2人乗りながら時速200キロの浮上走行に成功した。

 車体両サイドに翼と巨大なファンを持ち、10センチほど浮いて走る。予算的な問題があり、実用化には時間がかかる見通しだが、完成すると360人乗りで時速500キロ走行が可能。さらに消費電力は新幹線の3分の1、リニアの10分の1程度に抑えられる。騒音についても、ガイドウェイ(軌道)に囲まれているために問題ない。すでに米イリノイ州のある市長が、空港と空港とを結ぶ交通手段として関心を示しているという。

 新幹線が登場してから半世紀──。列車が高速化したことで、都市と都市の“距離”が近くなった。それに伴って、人の流れや企業活動も変わった。小濱名誉教授は言う。

「列車が都市と都市とを高速で結ぶことで、人と人の交流も生まれ明るい社会が見えてくる。最終目的は、エアロトレインで東京─ロンドン間をユーラシア大陸を渡って2泊3日で結ぶこと。しかも、ダブルベッドに寝ながら行ける。それも夢ではありません」

AERA  2014年10月6日号より抜粋