心臓外科医 天野篤さん(58)順天堂大学部心臓血管外科教授。心臓を動かした状態で行うオフポンプ手術の第一人者。2012年に天皇陛下の心臓手術を執刀【こだわりの食】卵サンドイッチなども卵入りを選ぶ。「卵を食べると、命をいただいている、ということを感じ、あらたまった気持ちになる」【健康維持アイテム】ショルダーバッグキャスターバッグは使わない。自分が負荷に耐えられるかをチェックする【これやめました】お酒還暦を前に、仕事関係以外で飲むことはやめた。尿酸値管理の負担を減らすため。「引退後」を見据え、もう一度何かにチャレンジできる状態を準備しておきたい(撮影/写真部・岡田晃奈)
心臓外科医 天野篤さん(58)
順天堂大学部心臓血管外科教授。心臓を動かした状態で行うオフポンプ手術の第一人者。2012年に天皇陛下の心臓手術を執刀
【こだわりの食】卵
サンドイッチなども卵入りを選ぶ。「卵を食べると、命をいただいている、ということを感じ、あらたまった気持ちになる」
【健康維持アイテム】ショルダーバッグ
キャスターバッグは使わない。自分が負荷に耐えられるかをチェックする
【これやめました】お酒
還暦を前に、仕事関係以外で飲むことはやめた。尿酸値管理の負担を減らすため。「引退後」を見据え、もう一度何かにチャレンジできる状態を準備しておきたい(撮影/写真部・岡田晃奈)

 いくつになっても発想が豊かで、意欲が衰えず、成果を出し続けるプロたち。その日常と考え方に秘訣があった。

 順天堂大学医学部の最寄り駅。地下4階から地上まで長いエスカレーターをたったったっと駆け上がっていく。

「普段の階段の上りは基本的にいつも1段飛ばしですよ。体の軸がしっかりしていなかったり、太ももの筋肉、骨盤、背骨がおかしかったりすると、1段飛ばしはできない。下りるときは駆け下ります。膝の関節、脳の疾患があると、バランス感覚が悪くて駆け下りることはできないですから」

 心臓外科医の天野篤さん(58)の健康チェックの指標の一つが「階段」だ。

 手術は多い日で1日4件、年間400~500件をこなす。日中は食事をとる暇もないほど手術に集中。平日は、家に帰らずに病院に寝泊まりする。片道30分の通勤時間も削って、睡眠時間を確保する。加えて、移動中は必ず寝る。スキマ時間を積み上げ、1週間で50時間の睡眠を死守する。

「睡眠っていうのは、僕らにとっては仕事です。休息ではなく、業務。睡眠不足でいちばん怖いのは、判断が鈍ることなんです」

 眠気による判断ミスが、もし手術中だったら取り返しがつかないことになる。命を扱う、ミスが許されない現場に日々接しているからこそ、睡眠の重要性を実感する。天野さんの場合、なるべく光を遮って足を少し上げるとすぐに寝られるという。

 ストレス解消法を尋ねると、「手術」と即答。

「仕事というか、なりわいを楽しめる人は、あんまりストレス感じないんじゃないかな。僕は結構楽しめる方。あと業務に関してはかなり完璧主義者。完璧にこなしているという状況が、自分にとって快感になって、さらに自分を後押ししてくれる」

 どんなに忙しくても、そんなにストレスを感じないのは、そのためだ。

AERA 2014年9月29日号より抜粋