「スクールに入らなくても受験し、合格する人もいます」とKIEミュージカルスクールの代表講師で元タカラジェンヌの小嶋希恵さん。多くの人に挑戦してほしいとエールを送る(撮影/写真部・岡田晃奈)
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「スクールに入らなくても受験し、合格する人もいます」とKIEミュージカルスクールの代表講師で元タカラジェンヌの小嶋希恵さん。多くの人に挑戦してほしいとエールを送る(撮影/写真部・岡田晃奈)

「容姿端麗」、「卒業後宝塚歌劇団生徒として舞台人に適する」……宝塚音楽学校の募集要項にはこう記されている。入学を目指し、華麗な舞台に立つことを夢見て、猛特訓する少女たちがいる。受験倍率20倍以上の狭き門をくぐれなかったとしても、人生の“タカラ”が得られるようだ。

「はい5番、アラベスク、ドゥミプリエ。足の指を開く。もっと!」

 厳しい指導に、懸命に生徒たちが応える。本格的なバレエスクールならば、よくある光景かもしれない。だがここは、バレエの教室ではない。

「中学1年で出会ったタカラヅカの華やかな舞台。バレエだけじゃなく、歌もお芝居もある。楽しくて、直感的に自分が目指す世界だと思いました」(市場彩月さん・15歳)

 東京都文京区にあるKIEミュージカルスクールは、宝塚音楽学校の受験スクールだ。合格実績ナンバーワンといわれる同スクールには、タカラジェンヌを目指す少女たちが全国から集まっている。

 同スクールのレッスンは、バレエや声楽などを合わせ週1~2コマのコースからあるが、受験前は週7~8コマのレッスンを受ける生徒が大半だ。そんな生徒たちの頭の中は24時間、宝塚。

「『容姿端麗』というからには、しぐさや言葉遣いも、常に美しくなくてはいけないと教わりました。だから人の悪口は言わないようにしています」

 そう話す青木麗さん(16)は、「やばい」「うざい」などの言葉も使わないと決めた。

「身長を伸ばしたいんです。体に悪いものは極力避けようと思い、添加物の入っているものは一切食べません。コンビニに行くのも、お菓子もやめました」とは、増田樹乃さん(13)。健康も、タカラヅカへの道には重要だからだ。

 一方で、都内の別のスクールに通う伊藤真美さん(16)のレッスン参加理由はちょっと違う。

「タカラジェンヌになりたいというより、同世代の子が、目標を持って懸命に練習していると知り、仲間に入りたいと思ったんです」

 スクールに通うため、高校1年で新潟県から都内に引っ越した。

「同じ考えの仲間と一緒にタカラジェンヌを目指すのは、本当に楽しい。充実している」

 娘がスクールに通う佐藤健二さん(48)は、勤務先で新人採用を担当している。スクールは人材育成の観点からも意義があると感じた。

「一流大学出身とか、TOEICが高得点といった看板や資格よりも、目標に向かい個性を磨き、根性をつけた経験に魅力を感じます。私なら採用したいと思いますね」

AERA  2014年9月29日号より抜粋