就職活動の末に内定をゲットしても、あえて就職留年する学生が少なくない。専門家によると、就職留年という方法を選んでいい人ととダメな人がいるという。

 2013年12月にスタートした、15年卒の就職戦線。都内の有名私立大学経済学部4年の男子学生(21)は14年春、早々に二つの内定をゲットした。一つは大手メーカーから、もう一つは大手生命保険会社から。大成功ととらえる人も多そうな結果だが、

「しっくりきませんでした。準備を疎(おろそ)かにした反省もあって、自分ともう一回向き合いたい気持ちになったんです」

 内定を持ちつつ就活を続けたが、その後も思うような内定を得ることはできず、結局7月末には来年4月の就職を諦めて留年を決めた。

「休学するつもりなので、さらに1年分の学費がかかるわけではありません。今年は準備不足が悔やまれました。次の就職シーズンまで、海外留学して力をつけたい」

「しっくりくる」のはどのような会社なのか、まだ決めかねているが、来年は大手の商
社やメーカーを目標にしたいと考えている。

 同学年の友人だけで7人ほどが留年を選んだ。内定を持っている人もいる。自分だけではないと思うと、やや不安が薄らいだ。昨今の売り手市場も背中を押したという。

 今年、就職留年する学生は増えると予測されている。こうした動きについて、マイナビの三上隆次編集長はこう話す。

「景気が悪いと、翌年は環境がさらに悪化するという懸念や保護者の経済状況の悪化などで留年を避ける人が増えるのですが、昨今の状況だと、『来年はもっとよくなる』と思うのかもしれません」

 一橋大学キャリア支援室の西山昭彦特任教授によれば、就職留年を選ぶ人は「頑張ったがうまくいかなかった人」と「準備不足だった人」の2種類。一橋大学では、後者の人は翌年、しっかり準備して納得の内定を得ることも多いというが、問題は前者だ。

「同じことを繰り返さないように気をつけたほうがよいでしょう」(西山教授)

 前出の三上編集長は、内定先に就職すべきか、留年するか悩んだときは自己分析に立ち返れ、とアドバイスする。

「給与、勤務地、やりたいこと、ワークライフバランスなどに優先順位をつけましょう。自分の持っている内定先に、実は希望に近いところがあるかもしれません」

AERA  2014年9月22日号より抜粋