米紙ニューヨーク・タイムズ(右)と英経済紙ファイナンシャル・タイムズ(左)は、ともに社説で消費税率再引き上げの延期を主張した(撮影/写真部・加藤夏子)
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米紙ニューヨーク・タイムズ(右)と英経済紙ファイナンシャル・タイムズ(左)は、ともに社説で消費税率再引き上げの延期を主張した(撮影/写真部・加藤夏子)

 今年4月には8%になり、そして来年10月には10%へと増税される消費税。しかしこの消費税の再増税延期を求める論調が、海外の有力メディアで高まっている。

 9月11日付の米紙ニューヨーク・タイムズの社説には、安倍晋三首相も財務省も驚いたことだろう。「日本経済の問題解決策」と題し、なんと来年10月に予定される消費税の再増税延期を求めたのだ。

<日本経済は4~6月期に前期より7.1%も縮んだ。政府が間違った政策を変えない限り、ようやく回復してきた景気が失速しかねないことを示している。4月の8%への消費税率引き上げによって、安倍首相は本気で政府の借金を減らそうとしている、というシグナルを投資家に送ろうとした。しかし一方で、消費の急激な落ち込みも招いてしまった。来年予定される再増税は延期すべきだ>

 これに先立つ8月29日には、英経済紙のフィナンシャル・タイムズ(アジア版)も、社説で再増税の延期論を展開した。

<安倍首相は財務省に立ち向かい、再増税を延期すべきだ。8%への増税を決断したのは勇敢だったが、同時に無鉄砲でもあったかもしれない>

 世界のオピニオンリーダーに強い影響力を持つ両紙を筆頭に、主だった海外メディアは、来年10月に予定される再増税に対し、相次いで疑いの目を向け始めている。

 その根拠は、4月の消費増税で個人消費が落ち込み、日本経済が失速しつつある、という認識だ。

 9月8日に公表された4~6月期の国内総生産(GDP)の2次速報で、実質GDPの成長率は年率換算で前期比マイナス7.1%へ引き下げられた。これはリーマン・ショック以来の大きな景気の落ち込みだ。そのあと発表された経済指標もさえないため、国内外で日本経済の先行きに厳しい見方が広がっている。再増税によって景気が完全に腰折れすれば、結局は税収も伸び悩んで財政再建が遠のくばかりでなく、世界経済にも悪影響を与えかねない。

AERA 2014年9月29日号より抜粋