長寿はめでたい。だが、単純にそう喜んでばかりいられない時代になってきた。

 総務省の「家計調査年報」(2013年)によると、夫が65歳以上で妻が60歳以上の、現役を引退して年金が主な収入源となっている無職の高齢夫婦世帯の平均的な収入は約21万円。支出は食費や住居費、税金や社会保険料などを合わせて約27万円。毎月6万円近くの赤字になる。

 老後資金は、年金支給が始まるまでの生活費と65歳以降の生活費に加え、病気介護の費用も考えなければならない。ファイナンシャルプランナーの藤川太さんは、

「60歳で定年を迎える場合、夫婦で2千万~3千万円はあったほうがいい。でも、40代半ばから50代半ばは人生で一番お金を使う時期です。今は給与が上がらず、老後資金どころではない人も多いので、いかにへこみを減らし、家計を崩壊させないようにするかが重要です」

 人生には何度か貯め時と使い時があるという。子どもの学校卒業後から退職金をもらうまでが「最後の貯め時」だ。藤川さんは、老後資金はこの時期にしっかり貯めることを勧める。

 貯めるだけではない。「65歳を超えても積極的に働くこと」が豊かな老後を過ごすカギだ。

「60 歳だと元気な方も多いので、定年後に会社で継続雇用が可能なら、積極的に働いたほうがいい。たとえ年収300万円になっても5年で1500万円になります。節約するよりずっとラクなはずです。さらに、夫だけでなく、妻も働くことを視野に入れてほしい」(藤川さん)

 自営業者や非正規雇用者の老後はさらに厳しい。

「相当財産を築かないといけない。最低でも65歳で3千万円を貯め、かつ70歳までは働きたい」(藤川さん)

AERA 2014年9月22日号より抜粋