KIEミュージカルスクールのレッスン風景。つらいポーズでも顔はしっかり笑顔をキープする。日々の訓練で、普段の美しい立ち居振る舞いが自然と身につくのも納得(撮影/写真部・岡田晃奈)
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KIEミュージカルスクールのレッスン風景。つらいポーズでも顔はしっかり笑顔をキープする。日々の訓練で、普段の美しい立ち居振る舞いが自然と身につくのも納得(撮影/写真部・岡田晃奈)

 今年、創立100周年を迎えた宝塚歌劇(タカラヅカ)。その舞台に立つためには、ある意味で大学受験以上に厳しい試験を突破しなければならない。

 宝塚歌劇のきらびやかな世界は、女性たちを惹きつけてきた。舞台に立つのは女性だけで、全員が専門の養成機関である宝塚音楽学校の卒業生だ。彼女たちは同校で2年間、舞台人としての腕をみっちりと磨きステージに上がる。その厳しさは知られているが、それ以前に、超難関といわれる宝塚音楽学校の入学を目指す過程で、すでに熱いレッスンがスタートしているのだ。

 宝塚音楽学校の入試は、毎年3月に行われる。同校の募集要項をみると、応募資格は中学3年~高校3年。「容姿端麗」かつ「卒業後宝塚歌劇団生徒として舞台人に適する」人とある。

 1次から3次試験までの過程で、面接、歌唱、舞踊、健康面などを審査し、約40人に絞り込む。1次試験は面接のみ。ここでは「容姿、口跡、動作、態度、華やかさなど、宝塚歌劇の舞台への適性」が審査される。バレエやダンスなどのレッスンを重ねても、成果を見てもらえるのは2次試験から。

 受験機会は人生で4回のみ。どんなに練習を積んでも数十人に一人しか合格できない。宝塚受験を知る人たちの間では、「東の東大、西の宝塚」と言われるほど、才能と努力がなければ突破できない、狭き門なのだ。

 それでもタカラジェンヌになりたい──。そんな希望を抱く少女たちが、宝塚受験スクールで、懸命に練習を積む。宝塚受験に特化したバレエやダンス、声楽、さらには話し方やしぐさ、自己アピールの仕方を習得するのだ。

 少子化で習い事市場の競争が激化しているにもかかわらず、入門する生徒は後を絶たない。元タカラジェンヌが運営するスクールは首都圏や近畿圏に多く、合格率の高さを知って、遠方から通う生徒も珍しくない。

「人気演目の『ベルサイユのばら』が上演された影響もありますが、100周年を機に生徒は増えました」

 KIEミュージカルスクール代表講師で元タカラジェンヌの小嶋希恵さんは話す。本年度は入学者が3割近く増えた。

「宝塚音楽学校の受験は、近年23~24倍程度で推移していましたが、今年3月の受験では、26.6倍に上がりました。いま通っている生徒たちが受験する来年は、もっと倍率が上がると考えています」

AERA 2014年9月29日号より抜粋