石井眞希さん(左)は、平日は建設会社で課長として働き、休日や夜は自宅で料理教室を開く。そのほかにも、自宅でさまざまなイベントを開催中(撮影/倉田貴志)
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石井眞希さん(左)は、平日は建設会社で課長として働き、休日や夜は自宅で料理教室を開く。そのほかにも、自宅でさまざまなイベントを開催中(撮影/倉田貴志)
森もり子さん作のLINEスタンプ「もっと私にかまってよ!」。なかなか返事をくれない彼氏を追い詰める(?)のにもってこい。11月にはコミックエッセイの発売も決定(撮影/倉田貴志)
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森もり子さん作のLINEスタンプ「もっと私にかまってよ!」。なかなか返事をくれない彼氏を追い詰める(?)のにもってこい。11月にはコミックエッセイの発売も決定(撮影/倉田貴志)

 ネット上の仕組みやサービスの広がりで、「趣味や特技で小金稼ぎ」が可能になった。最近の副業事情を追った。

「今日は、アップルパイを作ります」

 日曜日の昼下がり。東京都世田谷区にあるマンションのキッチンに、10人が集まった。キッチンの主は1級建築士の資格を持ち、建設会社で働く石井眞希さん(47)。休日や仕事の後に、副業として自宅で料理サロンを開く「サロネーゼ」だ。

 この料理サロンのテーマは「時短・簡単」。石井さんがコツや手順を解説しながら料理をして、できあがった料理をみんなで味わう。参加費が1人千円とリーズナブルなこともあって、この日の定員もすぐにいっぱいになった。

 きっかけはフェイスブック。得意な料理の写真をアップしていたら、「教えてほしい」というコメントが多く寄せられた。「それなら」と自宅でサロンを開くようになって、もう4年になる。この日の生徒たち10人も、フェイスブックを通じて「石井先生」のもとに集まった。

 SNSに背中を押され、気の置けない仲間を集めた石井さんのように、ネット上のサービスや仕組みを利用して副業を始める人が増えている。

「スタンプラッシュ」でにぎわう「LINE Creators Market(ラインクリエイターズマーケット)」も副業の場の一つだ。

 LINEで使えるスタンプを自作して販売できるようになったのは、今年の春。これが瞬く間に広がって、約3カ月で販売総額12億円を超えるマーケットに成長した。LINEが8月に国内のスタンプクリエイター約900人に行ったアンケートによると、その約30%が会社員で、クリエイティブ業務経験のない人、デザインの勉強をしたことのない人がそれぞれ約半数に上った。

 人気スタンプ「もっと私にかまってよ!」の作者、森もり子さんも、営業職の会社員からスタンプクリエイターとなって成功した人のひとりだ。

 20代とおぼしき女性が腕組みをして「返事マダ?」と眉をひそめたり、スマホをいじりながら「今どこ?」と机に突っ伏したり。これが話題になって、大ヒット。売上金はLINEと折半だが、1セット40個入り100円のスタンプで、すでに約700万円に上る売上金を手にしたという。

 こうなるともはや「副業」の域を超えている。実際、森さんにはスタンプのキャラクターを題材にしたコミックエッセイ出版の話が舞い込み、その制作に集中するために森さんは会社を退職した。副業だったスタンプ制作が本業になった。

AERA 2014年9月22日号より抜粋