エナジー系、機能系、ゼロ系から、ご当地系、美肌系まで健康飲料市場は拡大を続けている。今春には「脂肪」と「糖」の両方への効果をうたっら「Wトクホ」飲料も相次ぎ発売された(撮影/写真部・岡田晃奈)
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エナジー系、機能系、ゼロ系から、ご当地系、美肌系まで健康飲料市場は拡大を続けている。今春には「脂肪」と「糖」の両方への効果をうたっら「Wトクホ」飲料も相次ぎ発売された(撮影/写真部・岡田晃奈)

 近年、増加している「特定保健用食品(トクホ)」の認可飲料。薬事法に抵触しない範囲で機能性が表示できる飲料だ。なんとなく健康に良いイメージはあるが、実際のところはどうなのか。専門家に話を聞いた。

 トクホ飲料の人気を、脳科学の観点から読み解くのは、脳科学の知見に基づいたマーケティングを指南するセンタン(東京)の研究員、関根崇泰さんだ。

「トクホ飲料は薬事法に抵触しない範囲で機能性をうたっていますが、ほのめかす程度の内容にとどめていても、人間の脳は無意識に情報を補完します。さらに、表示にないほかの効果まで付け加えてしまうんです」(関根さん)

 健康を求める意識をうまく利用して市場を拡大しているトクホ、あるいは健康飲料だが、そもそも本当に効くのだろうか。国立健康・栄養研究所の梅垣敬三・情報センター長は、効き目についてこう話す。

「トクホの申請内容にウソがあってはいけない。臨床試験も必要。効き目は、あるかないか分からないぐらい弱いが、ウソではない。ただ、明確に、もしくは劇的な作用があるものならば、危ないので国は認められないでしょう」(梅垣さん)

 トクホは効き目も危険性も“マイルド”なようだが、梅垣さんは、ある飲料メーカーの出来事を例に、トクホ飲料の「意外な効能」を指摘する。

 その飲料メーカーは、トクホ申請用の臨床試験のため、社内から中性脂肪の数値が高い社員を集めた。それぞれ同じ条件に整えようと、試験前に同じ食事メニューを取るよう社員に勧めた。すると、臨床試験で製品を飲ませる前に、全員が正常値に戻ってしまった。

「トクホを飲むことをきっかけにして、生活習慣の改善という副次的効果を生むことがあります」(梅垣さん)

 もっとも、トクホ制度に対しては批判もある。ある大手製薬会社の社員は、こう憤る。

「人口減と少子高齢化で市場が縮むなか、官僚と業界があみだした制度がトクホです。開発から認可までたった数年。そもそも、きちんと体に効いているというエビデンス(証拠)があるのか。とにかく“ゆるい”と言わざるを得ませんね」

AERA  2014年9月29日号より抜粋