自分の息子を愛してやまない、「息子ラブ」な母親たち。親子仲が良いのいいことだが、一方で不安を抱く夫もいる。

「今日はサラサラやな」

 家事をしていると、そう言って髪を撫でてくるのは、愛する中学3年の息子。神戸市に住む自営業のCさん(47)は、そんなわが子に夢中だ。

 髪フェチな息子は、勉強などの合間に髪の毛を触ると落ち着くようで、すぐに母親の髪を目当てにやってくる。これも「彼女ができるまで」と覚悟しつつも、褒められるといつもキュンとしてしまうのだ。

「髪にワックスをつけた日は、『今日はゴワゴワや~』と言って、わざとクシャクシャにして遊ぶんです。もちろん怒りません。嬉しいので」(Cさん)

 愛する息子の代わりにと、夫からペットを与えられている妻もいる。東京都足立区に住む会社員の女性・Dさん(44)の家族は、中学2年の息子と夫の3人家族。夫はいわゆる“イクメン”で、息子とサーフィンにもよく出かける。

 お風呂は「エコだから」という理由で抵抗なく母と息子も一緒に入る。寝るときは川の字という仲良し家族だ。ただDさんの息子への愛情が半端ではないと感じたのか、夫はDさんが息子の寝顔を撫で回す代わりに、数カ月前に飼い始めたウサギを撫でるよう勧めるように。

「息子もこのままずっとスキンシップをさせてくれるわけじゃないですよね。そうなったとき、この愛情のエネルギーが、夫である自分だけに向くのが怖いらしいです。まあウサギもカワイイので、いいんですが…」

 一緒にお風呂や添い寝、いつまでも恋人気分──。こうした息子ラブな母親たちは、異常なのか?原宿カウンセリングセンター所長で臨床心理士の信田さよ子さんは、こうアドバイスする。

「キレイと言えば母親はご機嫌だと思っている息子と、チヤホヤされて喜んでいる母親の関係はゲームのよう。子どもが自立できないほどに支配しているわけではなく、母親も楽観しているなら問題はないでしょう。息子が犯罪者になったりすることはないですよ。ただお風呂は、子どもが一緒に入りたがっても、生活習慣の教えとして、11、12歳の第二次性徴が始まるころに、親の側から区切りをつけるべき。将来、なんらかのリスクがないとは言い切れませんから」 

AERA 2014年9月15日号より抜粋