将来を見据えて、子どもにはお金の管理ができる大人になってほしいもの。マネー教育というと難しそうだが、簡単なツールで金銭感覚を身につけさせることもできるようだ。

 カードやスマホをかざせば支払いができる時代。お金の実感が薄れ、マネー教育は難しくなっている。金融広報中央委員会事務局の企画役、西崎淳一さんは、こう指摘する。

「目に見えないお金は使っている意識が薄れる。親子でお金の管理が甘くなりがちだ」

 そんな時代の高校生向けに、同委員会が作成した教材が「これであなたもひとり立ち」。高校に無料で配布している。

 この教材の中に、生まれてから高校生になるまでにかかったお金を計算するドリル「私の命を育んだお金はいくら?」がある。出産費用、光熱・水道費から家庭教育費(習い事や塾、家庭教師の経費)まで書き込んでいき、すべて足した合計額が「命を育んだお金」だ。

 東京都内に住む会社員の女性Aさん(44)は、都立高校3年の次女(18)に計算させた。すると、合計額は2900万円だった。

「欲しいものがあれば、親はいつでもお金をくれる」と思っていた節のある次女は、さすがに「こんなにお金がかかってたなんて」と驚いた。

 神戸市立科学技術高校の藤原美砂子教諭は、経済の授業でこの教材を使っている。

「生徒たちは、光熱費や住居費など親が払っているお金の存在に気づいてない」(藤原教諭)

 株式投資や資産運用を教える前に、生きていくために必要なお金の存在を知ることから、マネー教育は始まるのだ。

AERA  2014年9月22日号より抜粋