いい大学にいい会社。自分の成功体験を子どもにも受け継がせたい。高学歴な親の中には、そうした思いから、生まれる前から子どもの将来設計をする人もいるようだ。

 都内の化粧品メーカーに勤める女性(38)は、夫が旧帝大の大学院を出ていて、自身も4年制の女子大卒。小学1年の息子を出産するとき、臨月のお腹を抱え、エクセルである表を作った。子どもが35歳までにぶつかるであろう学習面の課題を1年ごとに詳細にまとめた「to doリスト」。目標から逆算した将来へのロードマップだ。

 インターネットでお受験ブログを読みまくり情報を集約。目標は、米デューク大学を卒業して眼科医になり、全国10カ所でクリニックを展開することと定めた。リストに沿って息子は3歳から「くもん」に通い、小学校を受験。ハワイ旅行中も宿題は欠かさず、読書は目標の月100冊をとっくにクリアしている。逆算しながら子育て中だが、あくまで子どもの夢を応援するためだと言う。

「将来が見えない時代なので、学歴と収入があってこそ自分の夢や好きなことが実現できる。その環境を整えることが親の務めだと思います」

 職場では夢を抱いて独立した同僚たちを何人も見てきたが、中には起業に失敗し、どこで何をしているのかわからない人もいる。もし自己破産しても使える資格は医師だけだろう。なかでも訴訟リスクの低そうな眼科医は、将来の職業に最適だ。

 小学1年の今年は塾を決めることが課題だ。大手学習塾の入塾テストを受けた結果、息子は全国20位以内だったが、本音をこう漏らす。

「これまでの学習ですでに小学校課程の勉強を終えているのに、なぜ1位じゃないの。これからライバルが増えて順位は落ちていくはずなのに…」

AERA 2014年9月15日号より抜粋