ある調査研究によると、「家の中の掃除や整頓を手伝ったこと」などのお手伝い経験を含め、子どもの頃の体験活動が豊富だと、最終学歴が高く年収が多いという傾向が見られたという。

 将来を見据えてぜひ子どもはお手伝いができるように育てたいものだが、実際はうまくいかないことも…。親はやってほしいのに子どもがお手伝いをしない家庭と、自主的にお手伝いをする家庭の違いはなんだろう?ある家庭のケースを紹介する。

 奈良県生駒市に住む坪井美佐さん(44)にとって、娘の光結さん(10)は、家事の大きな戦力だ。夏休み中は毎朝、夫のお弁当を作ってくれる。しかも、それと一緒に、美佐さんと自分、弟の分の昼食も!光結さん本人は、

「お母さんの昼食だと、そうめん、ラーメン、パスタみたいな“麺地獄”になるから」

 と素っ気ないが、家族全員がそれぞれに気づいたことをやる坪井家には、当番表も係もない。ここまで子どもが自立したのは、家族で年に15回ほども出かけるキャンプのおかげだという。

 光結さんは4歳ぐらいから出発準備も全て、自分でやっている。この夏は、3歳の弟も自分用のハンマーで、テント設営のお手伝いデビュー。父親が1人で作業するほうが断然早いのだが、慌ただしい日常ではなく休日のキャンプなら、手間をかける時間はいくらだってある。親も、子どもの失敗を恐れず、じっくりお手伝いをさせることができるのだ。

 いざ就活というときに、すでに成人した子どものために親ができることは少ない。親子が家事を通じて本気で向き合える期間も案外短いと心得て、子どもの「やりたい」に付き合いたい。

AERA  2014年9月8日号より抜粋