子育てする親にとって、子どもと触れ合う時間をどう過ごすかは重要。中には、少ない時間をITツールを使ってフル活用している親もいる。

 コミュニティーデザイナーとして、自宅のある北海道帯広市から全国を飛び回る西上ありささん(35)は、究極に親子がくっついて離れる、メリハリ上手な母親だ。今日は離島へ、明日は山へ、なんてこともざら。娘(14)と過ごせる時間は限られている。
 
 10日間の出張から戻り、娘と久々に会った時には、「買い物に出かける10分だってもったいない」。だから自分用と娘用のシャンプー「1年分」をまとめ買いしている。

「機内で『次に娘に会ったら』と思考をめぐらせ、帰宅したらべったりする。娘は出張から帰ったママに『これだけは』ということを全部してもらえるよう、メモまでしていて。精神的な距離は近い親子だと思います」

 西上さんは、大阪芸術大学の2年生だった21歳の時に娘を出産し、すぐ離婚シングルマザーになった。北海道の両親に「泣く泣く」娘を預け、平日は職場のある大阪へ通い、週末に北海道の娘のもとに戻る「単身赴任」生活を続けたこともある。

 いまは中学生になった娘にはiPadを持たせ、メディアリテラシーを身につけさせた。出張中は、ビデオ電話ができる「ハングアウト」で娘の宿題をみる。娘が画面に向かってノートを見せ、旅先のホテルにいる西上さんがそれを見ながらアドバイスをする。

 急ぎではないけれどじっくり相談したいことは、Gmail経由で娘がメールする。ただし、急ぎのことは、電話で直接話す。西上さんがすぐには出られないこともあるため、SNSの更新などを振動で通知する、「ライフログリストバンド」を活用。娘専用のフェイスブック経由で娘が西上さんにメッセージを送ると、バンドをはめた西上さんの手首がブルッとする。離れていても、お互いが身近に感じられるようITをフル活用している。

AERA 2014年9月15日号より抜粋