2014年6月、中国・重慶のアップルストア前でオープンを待つ人々。このころは、アップル人気に湧いていた(写真:gettyimages)
2014年6月、中国・重慶のアップルストア前でオープンを待つ人々。このころは、アップル人気に湧いていた(写真:gettyimages)

 偽物iPhone6が登場するほど、アップル人気が高い中国。しかしその人気も、今後は分からないようだ。

 8月上旬。海外のITニュースサイトが、「iPhone6」とされるスマートフォンの使用感を映像で配信した。本家アップルからは発表されていない。無論、これは偽物。中国が“十八番”とするパクリ製品だ。7月に中国で発売されていた。

 とはいえ、梱包された箱や画面のデザインはiPhoneにうり二つ。ネット上ではこの映像が瞬く間に拡散された。

 そもそもiPhone6は、米アップルが9月9日(日本時間10日)に開くプレス向けイベントで発表されるというのがもっぱらの噂だ。そのスペックについても、リーク情報は多数。画面サイズでは現在の4インチよりひと回り大きい4.7インチと5.5インチのモデルが加わる、液晶パネルにはより硬度が高いサファイアガラスが使われる、モバイル決済を可能にするために近距離無線通信「NFC」機能が搭載される、世界的な“自撮り”ブームに対応して本体正面のカメラの解像度が高まる、などだ。

 冒頭の偽スマホの機能はこれらとはまるで異なるが、それでも作られるのは、「国内でのiPhone人気がとても高いから」だと北京在住ジャーナリストの陳言氏は言い、こう続ける。

「金満の役人たちがこぞってiPhoneを持っている。つまり、高級アクセサリーのような人気ぶりなんです」

 ただ、陳言氏は、こうも付け加えた。

「今ほどの人気は、この先、続かないかもしれませんね」

 なぜか。7月末に、共産党の機関紙「環球時報」は、党員や官僚、軍人らに、iPhoneの使用を禁じるよう呼びかける論評を掲載した。通信データが米国などに傍受される可能性があることを根拠としているが、成り行きによっては党員などが公にiPhoneを持ちづらくなる。

 さらに、「中国は次世代のアップルを生み出そうとしている」と話すのは、ウォールストリート・ジャーナルで記者としてアップルを担当した『沈みゆく帝国 スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか』の著者、ケイン岩谷ゆかりさんだ。

「中国は、国内市場でいくら売り上げを伸ばしたとか儲かったとか露骨に数字を出された途端、その企業を排除しようとすることがある。自国市場を金儲けの場と捉えられることに抵抗感が強いんです。自国メーカーのレノボ(聯想集団)やファーウェイ(華為技術)を世界に通用する企業にするんだという機運が強まってきました」

AERA 2014年9月15日号より抜粋