夫婦の働き方が多様化する中で、各家庭で夫と妻それぞれの収入や忙しさは異なり、それによって家事の担い手も変わっている。男性は家事下手な「弱者」だとひとくくりにできたのは、もう過去の話だ。

 結婚初日。愛知県に住む会社員の男性(35)は、楽しみにしていた妻の手料理に驚愕した。一品目はお好み焼き。次に出てきたのは韓国料理のチヂミ。そして、メーンディッシュはピザ。すべて粉ものだった。多国籍料理ではあるけれど、栄養バランスを考えなかったんだろうか…。一抹の不安は、的中した。

 医師である妻は、幼いころから勉強中心の生活で、家事の経験は少なかったのだ。結婚から半年は家事の仕方でけんかが続いた。例えば、妻の掃除は物を移動させるだけで終わってしまう。掃除機や雑巾がけがどうして必要なのかを教えるため「ほこりにダニがたまるんだよ」と話すと、妻はダニ用の殺虫スプレーをまき始めた。それなら、もっと簡単な作業を任せようと浴槽の掃除を頼んだら、洗剤を直接手に付けて洗い始めた。

 専業主婦の母親には「男が家のことをするのを周りの人に見られたら恥ずかしい」と止められたが、自分がやるほうが自然だった。子どもが生まれて洗濯物が急に増え、洗剤にも気を使うようになり、家事の負担は重くなる一方。それでも男性は妻と衝突するよりも住み分けすることを選んだ。

 東京都内に住む起業準備中の男性(28)は、自他共に認める「几帳面」だ。床には絶対に物を置かない。はさみ一つをとっても、置く場所が決まっているのはもちろん、置く角度まで決まっている。それに合わせてくれないと、「ルール違反じゃない?」と、穏やかではあってもきっぱりと妻に声をかける。

「妻は私が家事にうるさい人だと知っていて結婚したはず。相手の性格を尊重する思いやりを持ってほしい」

AERA 2014年9月1日号より抜粋