女性は「自分の価値観を押しつけて、言い分を聞いていなかった」と話した(撮影/今村拓馬)
女性は「自分の価値観を押しつけて、言い分を聞いていなかった」と話した(撮影/今村拓馬)

 子どもが加害者になってしまった事件に接するたびに、心が震える。うちの子も、将来――。「こうすれば絶対に大丈夫」などという正解はない。でも、「できること」はあるはずだ。実際に次男が傷害事件で逮捕されたという首都圏に暮らす専業主婦に話を聞いた。

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 サラリーマンの夫と息子2人の4人家族。次男は中学1年のときに非行に走り、夜遊びや万引き、喫煙などを経て中学3年の夏に集団暴行で現行犯逮捕されました。被害者の方に全治2週間のけがをさせ、その後4週間、鑑別所に入りました。

 いま思うと、子どもの言い分を十分に聞いてやれない親でした。価値観の押し付けでスナック菓子やカップ麺、甘い飲料は一切与えなかった。祖父母宅で食べていたと知ったのは成人してからです。小学校高学年で担任の先生に呼び出されお叱りを受けると、先生の言うことがすべてに思えた。

「みんなできるのに、なんでできないの」「そんな子に育てた覚えはありません」「お願いだから私のおなかに戻って育て直させて」。こんな言葉をたくさん浴びせました。次男に「俺のため俺のためって、本当はお前の世間体のためだろ」と言われたことは忘れません。

 あれから時が流れ、息子との会話も増えました。以前の反省から、話しているときは価値観を押し付けるのではなく、「私はこう思うよ」とだけ伝えるようにしています。息子を信頼して、彼が言いたくないことは根掘り葉掘り聞かないよう心がけています。

AERA 2014年9月1日号より抜粋