講師はロンドンのVictor先生。スマホでスカイプにつなげば、朝5時から夜中の2時まで、いつでもどこでもレッスンが受けられる。そう、会社の自席でもね(撮影/写真部・加藤夏子)
講師はロンドンのVictor先生。スマホでスカイプにつなげば、朝5時から夜中の2時まで、いつでもどこでもレッスンが受けられる。そう、会社の自席でもね(撮影/写真部・加藤夏子)

 TOEICの得点と英会話力は必ずしもイコールではない…ということを示すように、アエラ編集部にはTOEIC満点にも関わらずしゃべれない編集部員が。彼女が英会話力アップのために、真昼の編集部で英会話を決行した。

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 TOEIC990点を取ったのは昨年4月のことだ。満点の喜びはつかの間、これでもう「しゃべれません」という言い訳は通用しなくなった、と心は重くなった。

 しゃべる機会が圧倒的に足りていないことはわかっている。それでも海外の、外国人しかいないところでしゃべるならまだいい。何が嫌って、問題は日本人だ。自分より英語のうまい日本人がいる前で、英語をしゃべるのが嫌なのだ。外国人を電車で案内するのも嫌い。乗客みんなが耳をそばだて、「あれでTOEIC満点かよ、ぷぷぷ」と笑っているような妄想に取りつかれるのだ。

 この「しゃべれないコンプレックス」を乗り越える方法を探れ、というのが今回の指令だ。そんなの簡単に乗り越えられたら苦労してないんですが、とだめもとで知り合いの英語講師に助言を求めたら、「会社の自分の席で、オンラインレッスンを受けてみれば?」とのこと。

 編集部のど真ん中で、しゃべれと?なるほどそれは嫌だ。痛いところを突いてくる。

「人が多い時間帯にね」

 デスクからも釘をさされ、仕方なく校了日の真っ昼間に決行した。試したのはアルクオンライン英会話のビジネス英会話コース。後ろにはカメラマンまで待機。どうにでもなれ、とレッスンを始めると25分はあっという間に過ぎた。

 終了後。周囲をキョロキョロする私。しーん。普段どおりの編集部(当たり前)。

「写真これでいいですか?」

 カメラマンは写真にしか興味なし。そりゃそうだ、そんなに暇じゃないのだ、みんな。 こうして私が長年かけて築きあげてきた大いなる幻想のメンタルバリアは、あっけなく崩れ去ったのだった。

AERA 2014年8月25日号より抜粋