ISSのロボットアームを操作して、船外活動を支援する若田さん(写真:JAXA/NASA提供)
ISSのロボットアームを操作して、船外活動を支援する若田さん(写真:JAXA/NASA提供)

 国際宇宙ステーション(ISS)に約半年滞在し、後半の2カ月間は日本人初の船長を務めた若田光一さんに、リーダーの心得を聞いた。ビジネスにも役立ちそうだ。

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――チームをまとめるにはコミュニケーションが大切ですね。

 地上管制室のフライトディレクターと毎日電話で話した。クルーはこういう状態だから、今週はもっと仕事を入れてもいいとか。円滑なコミュニケーションで信頼関係が高まる。うまくやらないと、雰囲気が悪くなることも。管制室はクルーを気遣い、その気持ちが強すぎると、率直な意見交換ができないことがある。

 たとえば、船外活動の前日にトイレが壊れた。地上側は、翌日の船外活動に支障をきたさないよう、トイレ修理は来週にと考えたが、クルーは、仕事が増えてもその日のうちに修理したいと思った。みんなの意見をまとめてはっきり伝えた。細かいコミュニケーションで作業能率が大きく向上する。

――クルー間のコミュニケーションの工夫は。

 米国側とは同じ作業をしているが、別の作業が多いロシアのクルーとのコミュニケーションが減ってしまう。そこでロシア側の実験室のパソコンやプリンターが壊れると、私が行って修理した。若田ががんばってくれると彼らにもわかり、悩みごとを相談してくれるようになった。

――透明性のあるリーダーシップを意識されたそうですが。

 チームの一人一人が、何を考えているか、どこまでわかっているか、どこまでできるか、それぞれ普段の会話からくみとる。この人はバックアップが必要だから2人体制にするとか。必要に応じてアドバイスもする。できる人にはまかせる。

 重要なのは、チームとして最大の力を発揮すること。一人一人、このミッションで何を実現させようとしているかを理解し、その目標に向けて支援してあげると、信頼が高まる。あの人といっしょにいると、仕事がうまく終わっていたというのがいいですね。

AERA 2014年8月18日号より抜粋