スペースデブリの除去アストロスケールCEO 岡田光信さん岡田さんは元大蔵官僚で、外資系コンサルティング会社、ITベンチャーを経て起業(写真:アストロスケール提供)
スペースデブリの除去
アストロスケールCEO 岡田光信さん

岡田さんは元大蔵官僚で、外資系コンサルティング会社、ITベンチャーを経て起業(写真:アストロスケール提供)

 もはやビジネスの現場は地上だけではない。宇宙に商機を見出すベンチャーが登場している。

 次々にロケットや衛星が打ち上げられるなか、地球の周りに漂うスペースデブリ(宇宙ゴミ)を“掃除”しようというベンチャーがある。岡田光信(41)が2013年5月に設立したアストロスケール(シンガポール)だ。

 現在、地球の軌道上には、役割を終えた人工衛星やその破片、切り離されたロケットの残骸などが、高速で周回している。その速さは、およそ秒速8キロともいわれる。その数はといえば、大きさ10センチ以上のもので3万個、1センチ以上になると100万個が存在するとされる。

 実は宇宙ゴミは、1950年代までは存在しなかった。開発に伴う人間活動の拡大によって蓄積されてきたのだ。つまり、「100%人間が引き起こした環境問題」(岡田)といえる。増え続けた宇宙ゴミは、地球観測や測位、航法、通信、気象など、軌道上のさまざまな衛星に衝突する危険があり、地上の人間生活に影響を及ぼしかねない。

 この地球規模の問題に対し、各国で除去に向けた動きはあるが、岡田は、「政府の予算が絡むと、継続性やスピードが課題になる。また、軌道上を動く物体を追跡したり、大気圏に落とす技術が確立したりすれば、軍事的な応用も可能になる」と指摘。その上で、民間企業が宇宙ゴミの除去に取り組む利点をこう説明する。

「民間ならば、継続的に事業を進めるビジネスモデルを築くことができる。安全保障上の利害関係もない。これは衛星を利用する誰からも必要とされる仕事ですから、人類に課せられたミッションといえます」

 宇宙ゴミの除去技術は現在、研究・開発の途上にあり、“掃除”は4年後に始めようと計画している。ただ、業績は創業の初年度から黒字だ。

 世界中のさまざまな企業と宇宙に関わる共同プロジェクトを進めていて、そこから得られる収益を研究開発に回している。

AERA  2014年8月18号より抜粋