年をとってから古典全集を読むのを楽しみにしているという鈴木さん。岩波書店版(「新日本古典文学大系」)と新潮社版(「新潮日本古典集成」)で迷い、新潮社を選んでいたという。

「岩波の方が立派で、かっこつけるには岩波だけど、実際読むなら新潮社かなと。本文の隣に赤色で現代語訳が書かれていて読みやすいんですよ」

 鈴木さんにとっての堀田善衞の一冊は何だろう。

「悩むけど、やっぱり『ゴヤ』じゃないですかね」

●本棚は人生そのもの

 宮崎さんに言われて読み始めたものに、ネパールやブータンを探検した植物学者の中尾佐助や民俗学者・宮本常一もある。

「『忘れられた日本人』は大好き。もう、いっぱい買ったんですよ、あれ。宮本常一が撮った写真を見るのも好きですね」

 読書の原体験とも言うべき少年時代に耽溺した本、漫画、人文書、それから徳間書店入社後配属された「アサヒ芸能」に象徴されるようなルポ・ジャーナリズムもの。鈴木さんの本棚には、鈴木さんの人生の軌跡が表れていて、それぞれからいまのジブリに続く道が見える。

AERA  2014年8月11日号