社員を成果主義でムチ打ちながら、役員の報酬は業績不振なんて、どこ吹く風。同業他社を横目に見ながら、社長のお手盛りで決まる。役員報酬がどのように決まるのか、事情を知る人に話を聞いた。

「業界のライバル企業と比べて遜色がないようにする横並び意識。社内の序列への十分な配慮。そして、情実も含んだ社長のお手盛り。多くの企業はこの3点セットで決めています」

 役員報酬のコンサルティングを手がけてきた、ある人事コンサルタントはそう話す。1部上場のある大手メーカーからは、こんな依頼を受けたという。

「社長の報酬が1億円以下では格好がつかない。それに準じて、役員報酬も見直したい」

 窓口となったのは、人事でも経理でもなく秘書室。社内でもトップシークレットのため、というのが理由だ。報酬を決める“ものさし”となるのが、日本企業では不文律となっている「6・2・2」の法則。「6」はベースとなる基本報酬。残りの各「2」は、業績連動部分に当たる賞与とストックオプションの配分を指している。

 それに当てはめ、社長の報酬総額を1億円とすると、基本報酬は6千万円となる。この会社では、従業員の最上位に位置する執行役員の年収が2千万円ほど。これをボトムに、平取締役、常務、専務、副社長と職位が上がるごとに800万円ずつ上乗せしていく。これが「たたき台」だ。そこに、業界他社の役員の報酬データを突き合わせ、調整をかける。株主に問われた際に、もっともな回答ができるようにするためだ。最後の詰めは、社長と秘書室長の「密談」で決まったという。

AERA 2014年7月28日号より抜粋