塾で語り合う坂中と出席者たち。議論は数時間続くこともある。「移民政策を担う人材を育てたい」が口癖だ(撮影/編集部・野嶋剛)
塾で語り合う坂中と出席者たち。議論は数時間続くこともある。「移民政策を担う人材を育てたい」が口癖だ(撮影/編集部・野嶋剛)

 日本の労働力確保の方法として、移民の受け入れが話題にのぼりつつある。日本が移民に対して今後どのような対応をするか、実は海外ファンドも注目しているのだ。

「移民は、日本に不可欠なんです。移民開国なくして、日本は生き残れない」

 まくしたてるような言葉が、6月下旬の平日の夜、東京・新橋の路地裏のビルの一室に響く。耳を傾ける若い世代からは「移民は治安を悪くしないのでしょうか」「欧州のように混乱しないのですか」といった鋭い質問も飛ぶ。移民政策の伝道師と異名を取る坂中英徳は、さらに熱く答えを返す。

「この5年、移民問題は止まっていたが時代が動きだした」

 元法務省のキャリア。不法入国者をバンバン取り締まり、「鬼の坂中」と呼ばれた。退職後、「君子、豹変す」で、移民推進論者に。移民政策研究所を立ち上げ、勉強会「移民国家創成塾」で若者に説き続ける。

 活動は順調とは言えなかった。外国人問題をほとんど放置した民主党政権下で政治や社会の反応はゼロ。しかし、今年3月、外資系の巨大投資ファンドから相次いで「話を聞きたい」とコンタクトが入ったとき、「風」の到来を予感した。

「ファンドは中国から資金を引き揚げ、投資先を物色している。日本企業は財務も健全で技術もあるが、彼らには労働人口が減る国には投資できないルールがある。安倍政権の成長戦略で移民政策がどう打ち出されるか、注目しているのです」

 日本が岐路にあるのは明々白々だ。現状のままでは、1億3千万人弱の人口は2060年には8700万人へ。労働人口は8千万から4400万へ。1人の高齢者を労働者3人で支える構図から1人の高齢者を1人が支えるようになる。

AERA 2014年7月14日号より抜粋