「すみません、仕事が終わらなくて」と、待ち合わせ場所に小走りで現れた小川洋子さん(45歳、仮名)。4月に国際協力関係の会社で期限付き職員として働きだしたばかりとあって、仕事を覚えるのに必死で、午後6時の定時での退社はほとんどできない。


 小川さんは大学卒業後、総合職で大手旅行会社に就職。9年働いた後に、菓子職人になると決意して会社を辞めた。しばらくは専門学校に通い、料理教室で講師をしていたが賃金の安さなど待遇面で満足できなかった。以前のように海外とつながる会社がいいと転職を考えた。
 ところが、折からの就職氷河期で正社員になるのは難しかった。実家を出ての一人暮らし。生活していくためにやむを得ず、派遣、契約社員と渡り歩いた。努力家の小川さんは、与えられた場所でそれなりに仕事をしてきたが、雇用には期限がある。そのたびに新たに就活をしなければならなかった。現在の職場に決まるまでの就活は約半年を要し、5社ほど落ちたという。

●50歳になっても就活

「国際関係の今の仕事にはやりがいもあるし、働くこと自体はいいのです。けれども契約が切れるたびに、また就活をしなければならないことを考えると、これが耐えられない。次の就活は3年後なら48歳。5年後なら50歳です。その頃は、年齢的にも難しいだろうし、いつまでこんな状態が続くのかと思ってしまいます」
 父親からは、
「そんな思いをするくらいなら、最初の会社を辞めなければよかったのに」
 と苦言を呈されることもあるというが、「自分で選んだ道だから」と後悔はしていない。
 これまで縁談もあったが、結婚には結びつかなかった。今はあまり結婚願望がないと言う。
「不安を抱えながら生きていくより、パートナーがいたほうがいいのでしょうが、いまさら生活のために結婚しようとは思っていません。この人以外に結婚相手はいないという確信があればするでしょうが……。それより今は新しい仕事を覚えるほうが先です」

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