天安門事件から25周年を迎えた6月4日の夜、犠牲になった若者たちを追悼する集会で、ろうそくを手にする香港の人たち(写真:gettyimages)
天安門事件から25周年を迎えた6月4日の夜、犠牲になった若者たちを追悼する集会で、ろうそくを手にする香港の人たち(写真:gettyimages)

 高齢の知識人らもお構いなしに拘束する習近平(シーチンピン)指導部。遠のく事件再評価に、抵抗が強まる。日本でも連帯できるのか。

「いくらなんでも、こんな年寄りは捕まえないだろう」

 元中国社会科学院研究員、徐友漁さん(67)は今年初め、学術交流で日本に来ていたとき、言論に対して習近平政権の締め付けが強まっていることを心配する知人に、こう語っていた。

 1989年6月4日に起きた天安門事件から25年。徐さんは5月上旬、事件を語り合うプライベートな集まりに出席した直後、「公共秩序を乱した罪」で拘束された。

 中国では年齢の高い人は捕らえない不文律があったが今回はお構いなしだ。改革派ジャーナリスト高瑜さん(70)、天安門事件の学生に理解を示した趙紫陽元総書記のブレーンだった鮑彤(ホウ・トウ)さん(81)まで相次いで連行された。

 徐さんは5日までに釈放されたと伝えられるが、孔子様のころから「敬老之国」を誇った中国人のモラルはどこに消えたのかと嘆きたくなる。

 政府に厳しい発言も辞さないことで知られる人気小説家の慕容雪村さんは、一時滞在先のシドニーから、ニューヨーク・タイムズのウェブ版のコラムに、「私もまた、天安門のために立ち上がろう」という過激なタイトルの一文を寄せた。

「習近平政権は前任者たちより偏執的だ。胡錦濤(フーチンタオ)政権下の5年前、同じ集会を開いたが、誰も逮捕されなかった」
「中国政府は8千万の共産党員と、数百万の兵士、4兆米ドルの外貨準備高を擁しながら、単なる個人の集まりに、夜も眠れないほどおびえている」

 ほかにも徐さんと同じ集会にいた人権派弁護士の浦志強さんなど、天安門事件に絡む理由で拘束された人は中国全土で100人を超えた。過去にも「六四」の日のたびに「厳戒」と言われたが、今回は「超」がつく。

 中国滞在歴が長いジャーナリストの福島香織さんも「習近平が登場したときは、多くの人が『隠れ改革派』ではないかと内心期待していましたが、政府にとって使いようによっては役に立ってくれそうな穏健派の知識人たちを、ここまで迫害するとは驚きです」と語る。

AERA 2014年6月16日号より抜粋