菊池麻衣子さん(40)英国ウォーリック大学大学院修士課程修了パトロンプロジェクト代表職歴:大手化粧品会社広報室家族:会社員の夫(49) (撮影/家老芳美)
菊池麻衣子さん(40)
英国ウォーリック大学大学院修士課程修了

パトロンプロジェクト代表
職歴:大手化粧品会社広報室
家族:会社員の夫(49) (撮影/家老芳美)

 会社に縛られる生き方に見切りをつけ、ストレスのある社会から脱して家庭を基盤にゆったりと暮らす。アメリカの新しい主婦像を提唱した『ハウスワイフ2.0』という本が、日本でも話題になっている。ジャム作りや編み物をして田舎生活を謳歌し、SNSやブログを活用する主婦たちが描かれている。著者のエミリー・マッチャー氏もハーバード大卒の「主婦」だ。

 日本版の編集を担当した文藝春秋の衣川理花さんによると、日本版は働く女性も専業主婦も手に取っており、特に高学歴ハイキャリアだった専業主婦からは「キャリアを捨てて主婦を選んだ“心の叫び”が書かれていてスカッとした」(私大工学部卒・29歳)など共感のコメントが多く寄せられているという。

「中には『まるで私のことを書いているみたい』と自己申告される方もいて驚きました」

 女性たちがキャリアを捨ててまで手に入れたいものは何なのか。

 東大卒業後にイギリスの大学院でアートマネジメントを学んだ菊池麻衣子さん(40)は「妊活(妊娠活動)」のために昨年秋、大手化粧品会社のPR職を辞めた。

「妊娠を自然の流れに任せて仕事に邁進しているうちに30代後半になってしまい、検査では問題はないのになかなか授からない。39歳はラストチャンスかもしれないと思い、仕事優先のハードな生活から思い切って環境を変えてみようと決めました」

 主婦業と体調管理のかたわら、SNSなども用いてアーティストや芸術を支援する「パトロンプロジェクト」を始め、長年の夢も実現した。

「収入はありませんが、料理を丁寧に作り、夫や家族、友人とゆったり食事をする時間がなによりの幸せです」

 文筆家の大野左紀子さんは、高学歴のキャリア女性が「ハウスワイフ2.0」に関心をもつ理由を、こう分析する。

「夫の収入が高めで安定していて、食や環境問題への意識が高く、ネットスキルや情報収集力も高い。ハウスワイフになりやすいこれら『3高』の条件を、高学歴でキャリアを重ねてきた既婚女性はクリアしやすいのだと思います」

AERA 2014年6月16日号より抜粋