いよいよ目前に迫ったサッカーW杯ブラジル大会。元日本代表主将・宮本恒靖さんに、日本の戦いをどう見たらいいかを聞いた。

――宮本さんによれば、チームの潮目が変わったのは昨年11月のベルギー遠征だ。10月の東欧遠征で、本大会出場を逃したセルビア、ベラルーシに無得点で連敗。テレビ画面からは不穏な空気が伝わってきたという。

宮本:自分も経験がありますが、せっかく遠征に招集されても試合に使われないと、気持ちがとがってしまうものです。うまくいかなかったのだから、「メンバーを変えて自分を試してくれ」という控え選手の気持ちがチームに沈殿します。東欧遠征がそうでした。

 しかし翌月、ザッケローニ監督は初戦のオランダ戦でFW大迫、MF山口、GK西川を起用しました。日本らしいパスのリズムが戻りました。吉兆は、MF長谷部とFW岡崎の位置。日本が押し上げて攻めているときには長谷部が前に出ている。また岡崎が相手ボールになったときに、後ろに引かずに常にボールにプレッシャーをかけようとしています。それが次のベルギー戦の逆転勝ちにつながったのです。

――ただ、ベルギー遠征の2試合は、試合の序盤に自分たちのミスで失点を重ねた。ブラジルでの本大会も、開始15分がカギになる。中でもアフリカの雄、コートジボワールと戦う初戦の15分は、大会全体の流れを決める。

宮本:初戦は慎重にという気持ちはわかりますが、それが「弱気」になってはいけない。特にDFはリスクを抑えて守る一方で、「守ってばかりではないぞ」という動作をして相手FWを警戒させなければなりません。

 開始15分、センターバックが相手FWを怖がって引いて守るばかりでなく、ときには積極的にDFラインを押し上げて、相手FWが嫌がるようなことをしているかに注目です。

 ギリシャとの第2戦は初戦の結果にかかわらず、白星が求められます。相手DFはファウルが多いので、本田、遠藤のFKが有効です。最終戦のコロンビアも言われるほど怖い存在とは思えません。

 結果も大事ですが、組織的なパスワークという日本の持ち味が出せるのかどうか。それが将来につながると思います。

AERA 2014年5月26日号より抜粋