大企業ならもれなく持っている「稼ぐ力」。これについて、一橋大学大学院の楠木建教授は次のように話す。
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「稼いでいる」ということは、お客さんに価値を提供しているということ。企業の存在理由は「稼ぐ力」にあります。
少し整理してみましょう。まず、「稼ぐ力」を持つのは事業であって、「会社」ではありません。会社は事業の束です。
では、「稼ぐ力」はどこから生まれるか。方法は二つです。ひとつは、オポチュニティー(収益機会)を捉えたとき。経済成長著しい新興国では、人口が増え、続々と新たなニーズが生まれます。稼ぐ力の源泉はオポチュニティーを早くしっかりつかむことにあります。
しかし、日本のような成熟国では、もはやオポチュニティーの追い風はあまり期待できない。従って外的な収益機会よりも、自社で独自の価値を創る戦略ストーリーが大切になります。
例えば、ZARAとユニクロは同じアパレルメーカーです。いずれも企画から製造、物流、宣伝、販売を一貫して行う「SPA」というモデルです。両者は表面的には同じことをやっていますが、裏にある戦略ストーリーは180度違います。
アパレル業界を競馬に例えれば、ファスト・ファッションのZARAは、第3コーナーで馬券を買うという戦略です。刻々と変わる流行を追いかけ、売れ筋の服を、多品種少量生産かつ短いリードタイムで店に並べる。
一方、ユニクロは、自分たちの牧場で時間をかけて馬を育て、勝てる強力な馬だけを出走させるという戦略ストーリーです。ヒートテックやウルトラライトダウンなど、特定少数のダントツな強みを持つ品番を大量につくり、稼ぎます。
※AERA 2014年5月5日―12日合併号より抜粋