東京都 海城中高講座には例年30~40人の生徒が参加。担当以外の教師も生徒と一緒に聴講する。理系の3分の1が医学部を志望するという(写真:海城中高提供)
東京都 海城中高
講座には例年30~40人の生徒が参加。担当以外の教師も生徒と一緒に聴講する。理系の3分の1が医学部を志望するという(写真:海城中高提供)

 中高系教育に力を入れる中学、高校が増えている。手堅い就職や国立大進学、医学部合格など、将来を見据えた取り組みだ。

 理系学部の頂点を極める医学部。2014年の国公立医学部合格者数が36人と、例年首都圏でトップクラスの実績を上げているのが海城中学・高校(東京都新宿区)だ。

 年々医学部志望の生徒が増え、04年から課外講習を開講。高校2年の3学期から3年の2学期まで、毎週土曜日に80分の講座を開く。

「なぜ医師を目指すのか」から始まり「医師・患者関係論」「地域医療論」「先端医療論」と進む。講座の内容は、大学入試を分析し、論文などで頻出するテーマを分類して決めている。指導は社会、理科、国語の教師5人がチームであたる。医療従事者や医学部へ進学した卒業生たちが講義することもあるという。

 社会科の林敬教諭は、地域医療の講義にあたって「低医療費で長寿」の長野モデルを支えた長野県佐久市の佐久総合病院へ出かけ、調査を行った。「先端医療論」ではiPS細胞を使った再生医療や遺伝子治療など、最新の医療トピックスを取り上げ、高校生物の範囲で応用し講義を行う。

「常に報道に気を配り、専門書を読み込んで準備します。負担も大きいけれども、最先端の科学を勉強することで、日々の授業にも深みが出ます」(生物の関口伸一教諭)

 筑波大学医学群に進学した深井諒さんも、高校時代に受けたこの講座が役立ったという。

「医療に関するいろいろな話を聞くことで勉強に対する意欲がわいた。目指す医師像が明確になりました」

 深井さんは孤独死をテーマに取り上げ、千葉の団地まで出かけて取材した。そのときの印象が強く、将来は地域に根付いて患者を支える医師になりたいと考えている。

AERA  2014年4月28日号より抜粋