4月8日、アイルランドの国家元首として初めて英国を公式訪問したビギンズ大統領を歓迎する晩餐会がウィンザー城で開かれた。エリザベス女王は、かつて激しく敵対した両国のさらなる関係改善を力を込めて訴えた(写真:gettyimages)
4月8日、アイルランドの国家元首として初めて英国を公式訪問したビギンズ大統領を歓迎する晩餐会がウィンザー城で開かれた。エリザベス女王は、かつて激しく敵対した両国のさらなる関係改善を力を込めて訴えた(写真:gettyimages)

 ヨーロッパ最年長の王であるエリザベス女王の引退が噂されている。ただ、チャールズ皇太子の王位継承には、異論もあるようだ。

 うわさは2013年4月30日、オランダのベアトリックス女王(在位1980~2013年)が長男ウィレム・アレキサンダー皇太子(47)に王位を譲り退位した時から広がっていた。ベアトリックス女王は当時75歳で、イギリスのエリザベス女王は当時87歳。10歳以上年上のエリザベス女王が「次の退位者」に違いない、というものだ。現在ヨーロッパには七つの王室が存在するが、女王はその国王の中で最年長である。

 バッキンガム宮殿は女王の退位を否定しているが、準備はすでに始まっているようだ。女王は外国訪問を最小限に控えているし、国内公務は一昨年は380件を数えていたが、昨年は320件と減少した。また、若い世代が女王の仕事を受け持つようになった。女王の孫にあたるウィリアム王子(31)は、キャサリン妃(32)とジョージ王子(13年7月22日生まれ。生後9カ月)と4月7日から約3週間、ニュージーランドとオーストラリアを歴訪したが、これは女王の名代としての役目だった。

 決定的だったのは、今年1月にエリザベス女王の広報部門がチャールズ皇太子(65)の広報グループと統合されると決まったことだった。これは、女王が皇太子の広報体制の中に組み込まれることを意味しており、女王が退位する日は近いとの予想が一気に確信に変わった。イギリス人は賭け好きだが、女王の「年内退位」の賭け金が賭け屋に殺到したため、一時受け付けを中止するほどの騒ぎとなった。

 ただ、エリザベス女王が退位すると王位継承順位1位の長男チャールズ皇太子が国王になるが、皇太子在任期間はすでに英王室史上最長の62年を記録している。それだけに、現在、一般的にはすでに現役から引退する年齢で、新たに「国王」という仕事に就くことに不安の声が上がる。国王の責任の重さは、皇太子とは比べものにならないからだ。

 さらに一番の懸案事項がカミラ夫人(66)の処遇である。イギリスでは国王が戴冠すると、夫人は女王となり同様に戴冠する。チャールズ皇太子は、「カミラ女王」に対する国民の反応に不安を覚えているとされる。カミラ夫人に対しては、故ダイアナ妃(97年にパリで死亡。享年36)を苦しめたとして反感や嫌悪感がくすぶる。国民の故ダイアナ妃を慕う気持ちが根強いため、カミラ夫人に「女王」の称号を授けることに抵抗を示すのではないか。また、皇太子はこの際、人気が高いウィリアム王子に王位を譲るのが精神的苦痛を与えた息子への最後の償いではないかとも言われている。

AERA 2014年5月5日―12日合併号より抜粋