かの松下幸之助翁は、こんな金言を残している。

「ビジネスマンの一番大事な務めは愛されることである。愛されるような仕事をすることである。それができない人は、ビジネスマンに適さないです。必ず失敗する、と、こういうことです」

 愛される人といえば、フィギュアスケートの浅田真央選手。親しみを込めて「真央ちゃん」と呼ばれ、日本中、いや世界中の人々から愛されている。真央ちゃんに学べば、最強の社員になれるかもしれない。

『できる人より「愛」される人のほうが仕事も人生もうまくいくんだ。』の著者、橋村伸也氏は、真央ちゃんが愛される理由の一つに、テレビで見守り続けてきた人が多いことを挙げる。15歳で世界女王になり、スポットライトを浴び続けてきたのは知ってのとおりだが、

「人はコミュニケーションの数だけ、感情移入が生まれます」

 これをビジネスに当てはめると、上司や同僚とあいさつや会話を重ねることが、愛される第一歩といえる。橋村氏は続ける。

「愛される土台は素直さです。周囲の意見を受け入れる“余白”を持てるかがカギです」

 年齢や経験を重ねると、素直に人の意見を聞けなくなるもの。しかし、真央ちゃんは違う。バンクーバー五輪後、佐藤信夫コーチに師事し、スケーティングを基礎からつくり直した。

 芯があるけれど、力んでいないところも魅力だという。

「人はリラックスしているものが好き。彼女はスペシャルな力を持っていて芯は強いのに、力が入っていない」

 完璧ではないことも愛される秘訣で、

「できる人は四隅を埋めた仕事をしますが、本当に上に行く人は一つだけ隅を空ける。一人で完結せず、共同作業で最後の隅を埋める。するとつながりが強まり、かわいがられるのです」

AERA 2014年4月14日号より抜粋