未だ先行きの見えない電力問題。原発再稼働を巡って議論が交わされているが、一方で原発に限らず問題なのが燃料費についてだ。

 電力各社は、原発を止めたまま廃炉にすれば、膨大な負債を抱える。燃料費の割合が低く、原価償却される原発を1基再稼働するごとに「1千億円規模で火力発電の燃料費を節約できる」と説き、原子力規制委員会に10原発17基の審査を申請中だ。

 この再稼働論は、一見もっともらしいが、電力会社の「経営」と中長期的な日本の「経済」を短絡させている。経産省がはじいた3.6兆円の燃料費増の背景にはアベノミクスによる1ドル=80円台から100円超への急激な円安、日本が輸入するLNG(液化天然ガス)の「ジャパンプレミアム」と呼ばれる高価格構造が横たわる。古い火力は発電効率も悪い。貿易収支の悪化は、円高が是正されたにもかかわらず、輸出が伸びないことが影響している。

 増え続ける燃料費を抑えるには、全発電量の4割以上を占めるLNGの価格抑制が急務だ。原発がどうであれ、LNG価格の構造転換は至上命題である。

 LNGが高いのは、電力・ガス会社が安定確保のために石油価格連動の長期契約を生産者と結んでいるからだといわれる。それ自体、良くも悪くもない。2000年代半ばまで日本のLNG価格は欧州や北米に同調して100万BTU(英国熱量単位)当たり、4~7ドルで安定していた。しかしリーマン・ショック後、原油価格に引っ張られて15ドルに急騰。震災で、16~18ドルへと上昇し、契約方法が問題視されるようになった。

AERA  2014年3月17日号より抜粋